Linuxを使って大規模な検索システムを構築している、一風変わったベンチャー企業がある――。私が米Google社の存在を知ったのは1999年ごろだったと思います。当時はYahooを筆頭にAltavistaやLycos、Exite、Infoseek、Gooといった、いろいろな検索サービスが乱立していたこともあって、それほど気にも留めていませんでした。

 しかし、それから少し後に「Googleの検索精度が凄い」という話を聞き、どんなものかと実際にアクセスしてみました。GoogleのWebサイトを初めて見たときの驚きを、今でも覚えています。Webブラウザーの画面に表示されるのは検索ボックスだけ。他の検索サービスが「ポータルサイト」を目指して、画面内に多くの情報を詰め込むことを競い合っていたのとはあまりに対照的でした。「どうやって収益を得るのだろう」と思いつつ、Webブラウザー起動時に表示するWebサイトをGoogleに設定したのを記憶しています。

 その後、Google社の検索連動による広告ビジネスはインターネットの世界を席巻しました。同社は検索連動の広告ビジネスを礎として、「Gmail」や「Google Calendar」、「Google Maps」、「Google Docs」、そして「Android」といったサービスやソフトウエアを次々と生み出し、IT業界を代表する企業へと瞬く間に成長しました。私自身、Googleのサービスにどっぷり浸かっている状態です。「1社のサービスにここまで依存していいのか」と考えて他のサービスも試してみるのですが、結局またGoogleに戻ることを繰り返しています。

 Google社は創業以来、誰もやらないこと、もしくは後追いするにしても段違いにユニークなものを提供することで、インターネットの世界をリードしてきました。しかし近年、こうした企業スタイルが少しずつ変化しているように感じます。

 例えば、「Google+」はFacebookの後追いとも言えるSNSサービスですが、機能や使い勝手はFacebookのそれと大きな違いはありません。「投稿写真の補正機能」や「チャット機能」などの強化、といった流れもFacebookとほとんど同じです。また、2013年5月に発表した定額音楽配信サービスも、米Apple社や米Amazon.com社に先行したとはいえ、それほど目新しいものではありません。英Spotify社や米Rdio社などが、既に似たようなサービスを提供しているからです。

 具体的なビジネスモデルが見えているサービスやソフトウエアに注力して「安定成長」を目指すか、それともリスク覚悟で「Google Glass」のような突き抜けた「イノベーション(技術革新)」を続けるか。Google社は今、分水嶺を迎えているのかもしれません。前者を望むステークホルダーは多いと思いますが、新しもの好きな記者としては後者のスタイルで突き進んでくれることを願っています。

 日経エレクトロニクスの6月10日号の解説「技術先行から収益重視、垣間見えた戦略転換」では、2013年5月に開催された「Google I/O 2013」から見えたGoogle社の変化について分析しました。ご興味を抱かれた方はぜひご一読いただければ幸いです。