――過去に失敗したサービスで得た教訓はありますか。

伊勢 ずばり「プロジェクトは失敗することが多い」ということです。うまくいかなかったサービスでも、もちろん当初からきちんと仮説を立て、計画を考えていました。

 でも、一つのプロジェクトは、市場参入が遅くてダメでした。既に世の中にあるサービスで、他の企業にはない利点を四つほどかかげてサービスをスタートしましたが、遅きに失しました。

 利点が四つもあったことも、ダメだった理由でしょう。とにかく一つすごい利点を掲げないとうまくいかないのだと痛感しましたね。ただ、同じ時期に似たようなサービスを立ち上げた企業はその後、大手に事業を売却していますから目の付けどころは悪くなかったのだと思います。

 うまくいかなかったもう一つのプロジェクトは、市場が立ち上がる前に参入してしまった。今度は、投入が早すぎてユーザーをつかめなかったんです。これらのプロジェクトは、自分自身ではタイミングも仮説もバッチリだと思っていた。でも、結果的には、うまくいかなかったんです。

 これらの経験から得たのは、ほとんどの企業が作る製品やサービスは機能的に大差なく、市場投入のタイミングがとても大切だということ。そして、一つだけでいいから、ユーザーにとってすごい利点となる機能があることでした。

 でも、プロジェクトの失敗経験も重要なんですが、むしろ成功体験の方が大切だと最近感じています。ボケての前に担当した別のアプリのプロジェクトで数億円単位の収益と、100万ダウンロードを突破することを経験したんです。

 このサービスが軌道にのるまでは、急成長するサービスや事業のイメージを持つ事ができませんでした。うまくサービスを軌道に乗せる経験をすると、その後のサービスでも再現性が出てくると考えるようになりました。ともすると失敗談の方を選んで聞いてしまいがちですが、逆にサービスで成功した人の話を聞いて智恵をもらった方がいいと思っています。