メンバーを楽しく目的地に連れていく

 開発リーダーを務めた伊勢氏や、オモロキの創業者の鎌田氏はテレビ局の出身で、社内外の多くの関係者を巻き込んだチームで番組を作る過程が当たり前の環境を経験していました。「結局は新しいサービスを作って、市場に価値を提供することが目的なのだから、社外・社内にこだわる必要はない」という発想もあったといいます。

 伊勢氏は、開発リーダーの役割を「ゴールをメンバーに示して、楽しくメンバーを目的地に連れていくこと」と話していました。プロジェクトの進行管理や外部との交渉、事業計画策定などの雑多な領域の業務をリーダーがこなし、チーム内外のエース人材がアプリを楽しく開発できる環境を作り上げていたということでしょう。

アプリ版ボケての開発とサービス運営の経緯。
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 実際、開発のスピード感は、大手メーカーではなかなか考えられないものでした。伊勢氏から鎌田氏への電話からほぼ1カ月後の同年6月には、アプリ版ボケての企画概要が固まっています。その後に実際のアプリ開発作業に着手。3~4カ月ほどでアプリ開発を終え、同年10月に「iOS」向けのアプリを公開しました。

 iOS向けアプリを最初に公開したのは、対象がiPhoneとiPadだけなので、機能や画面サイズなど携帯端末の仕様の違いをほとんど気にすることなく開発できるからです。Android端末は、メーカーや機種ごとに仕様のばらつきが大きいので開発に手間が掛かります。そこで、Android向けアプリはiOS向けの2カ月後にリリースしています。

 その間は、全員が集まるような会議はほとんどなく、即断即決での意思決定がなされていたようです。開発チームのメンバーは、メールとプロジェクト管理ツールで情報やイメージを共有。リーダーの伊勢氏が大方針を決めて、メンバーに目標を伝えるというスタイルで開発を進めたといいます。

 前回も紹介したように、既にパソコン版のボケては一定のユーザー層を獲得していたこともあり、iOS向けアプリの公開3日後にはインストール数が10万本に達し、その後、Android向けを加えた公開4カ月後の100万本達成まで突き進んでいくことになります。

 もちろん、どんなに社内外のエース級人材を集めても、どんなに優れた企画の製品やサービスでも、「ふたを開けてみると、ユーザーからの反応がいま一つだった」ということはよくある話。アプリの業界でも、失敗アプリがよくはまってしまうパターンは、「企画自体は面白いけれど、それを基に技術に凝り、新しい機能をふんだんに盛り込んだら、あまり使われない状況に陥ってしまった」というものです。

 アプリ版ボケては、なぜ、この失敗の落とし穴にはまらなかったのでしょうか。