面白いサービスを実現した強い思い

 二人は、2008年9月にパソコン向けのWebサービスとしてβ版をリリース。鎌田氏が企画とユーザー・インタフェース(UI)を、和田氏がサービスの開発と運用を担当する役割分担で開発を進めました。

 「テレビとインターネットの融合」といっても、テレビのような映像サービスをインターネットで実現するという話ではありません。「テレビ番組で提供しているような『笑い』をインターネットの世界でも実現する」という目標が根底にあります。

ボケてのサービス運営の主な歴史。
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 前述したように鎌田氏の前職はテレビ局の社員でした。同氏は、テレビが提供するお笑いをこよなく愛する人。テレビ局を退職し、Webサービス関連の企業を立ち上げるにあたり、テレビ番組を上回る「笑い」をWebサービスで実現できなければ、起業した意味がないと考えていたそうです。

 その思いが原型となり「笑いのつぼをインターネットで共有する」というアイデアを具現化したWebサービスがボケて。ちなみに、スマホ向けアプリのプロジェクト・リーダーを務めているのは、アプリの企画・開発を手掛けるベンチャー企業のHalo(ハロ)の取締役を務める伊勢修氏。同氏は、テレビ局で鎌田氏の同期入社でした。現在は、オモロキの取締役兼CSO(最高戦略責任者)も兼任しています。

 ボケてが“100万インストール・アプリ”の仲間入りを果たした背景には、開発者たちの強い思いがありました。新しい製品やサービスを創出するには、企画段階で自分たちが実現したいことを「明確で分かりやすくしておく」必要があるというわけです。これは、Webサービスやアプリのようなソフトウエア開発の世界だけではなく、ものづくりに普遍的な成功要素の一つでしょう。

 ボケての場合は、「テレビ番組を上回る『笑い』をWebサービスで提供する」という大目標がそれです。この思いがブレることなく、継続できたことが、やはり多くのユーザーを巻き込めた一因となっています。

 企画段階から自分たちの目標を「明確で分かりやすくしておく」。何だ当たり前のことではないか。そう思うかもしれません。でも、これは言うは易しで、実行に移すのはとても難しい。技術開発や事業を運営する過程で、さまざまな課題や外部からの意見が入り込み、目標自体の軸がずれてしまう製品やサービスが世の中には多いのです。読者の皆さんも、そんな場面を経験した事がないでしょうか。