一言でシェール革命がエレクトロニクス産業に与える影響をまとめると「好影響」と考えている。マクロで考えれば、シェール革命は世界のエネルギーの需給緩和によりエネルギー価格の長期安定化をもたらし、発電コストの削減、輸送コストの削減、合成繊維や樹脂などの原料費の削減など、エレクトロニクス機器のデフレを加速する可能性が高く、需要を押し上げる可能性がある。これは新興国の需要を押し上げることにつながる。

 直接的には米国、日本、ドイツに与える影響が大きいと考えられる。米国はもちろんシェールガスを輸出するまでに拡大する生産により貿易収支が大幅に改善することが期待できることと、安価な電力を使って製造業回帰による雇用拡大が期待できる。

 米国の輸入額の中で最も大きな工業用材料(主な内訳は原油や燃料油などの石油製品)が減少することによって、貿易収支を改善する最大の原動力になることは間違いないだろう。

図1 米国の財輸入額の推移(品目別)
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 日本に与える影響はシェールガス輸入の恩恵だけではない。シェールガス産業に関わるパイプ、プラント、タンク、タンカー、建機などは日本企業に恩恵をもたらすし、シェールガス輸入が始まれば少なくとも現在の輸入価格18ドルを下回ることが予想される。

 ドイツでは再生可能エネルギー政策の失敗を認め、天然ガス火力発電へシフトしようとしている。これによって競争力を無くしている製造業の回復を狙うことができる。

 今後、米国が天然ガス輸出大国として頭角を現すことになれば、また他地域においてシェールガス開発が進めば、米国内のみならず、世界的に大きな政治的影響が及ぶと考えるべきだろう。

 弊社の調査では、2010年に米国でシェールガスにより60万人の雇用が創出された。さらに2015年には87万人、シェールガスが米国の天然ガス生産の60%を占める2035年には160万人に達すると予想している。

 また同調査では、経済効果を2015年までに年間1180億ドル、2035年までに年間2310億ドルと試算している。2011年の米国経常赤字は4659億ドルなので、この経済効果がいかに大きいかが分かる。ちなみに2011年の米国石油等のエネルギー輸入金額は4623億ドルなので、シェールガスやシェールオイルにより輸入が半減すれば米国経済が急速に好転する可能性は高い。

CO2排出も削減できる