5月の終わりから6月の初めにかけて、ベトナムへ行きました。もともとプライベートな旅行の予定でしたが、縁あって、現地の工業団地で活躍している日本人の方にも会うことができました。

 ベトナムの産業といえば、ゴム農園や縫製工場などを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし今では、スマートフォンや自動車の製造工場が多く進出しています。とりわけ有名なのは、韓国Samsung Electronics社のスマートフォン工場でしょう。世界最大のスマホ・メーカーのSamsung社は世界8カ国に工場を持っていますが、その中でも最大規模の生産拠点となっているのがベトナム。数年前に中国を抜き、2013年には同社のスマホの半分がベトナムで生産される見通しです。

 自動車工場も有名です。トヨタ自動車やホンダなどの世界的な自動車メーカーがベトナムに進出しています。こうしたスマホや自動車の世界的な大企業の工場は、ベトナム北部のハノイ近郊に多くあります。国が積極的に海外企業を北部に誘致しているのだと、ベトナムの産業に詳しい現地在住の知人が理由を説明してくれました。策を講じないでいると、皆、気候などが良く、水資源も豊富な南部に集中してしまうのだといいます、

 筆者は、そのベトナム南部を今回訪れました。ホーチミン近郊のビンズン省のミーフック工業団地です。新興国への進出では、現地のインフラ産業が育っていないために思いのほか苦労することが多いと、よく聞きます。ミーフック工業団地には、Samsung社やトヨタといった超大企業の姿はありませんが、海外企業のベトナム進出の支えとなるようなインフラ産業が育ちつつある様子を見ることができました。

 今回、ICや電子部品のプリント回路基板への実装を手掛ける、マツムラ電子工業のベトナム工場を見学する機会を得ました。こうした会社や工場が現地にないと、機器メーカーはすべての電子部品実装を自社で行わなければなりません。実装ラインまで現地の自社工場に持たないといけません。あるいは、せっかくベトナムに進出しても、プリント基板は輸入することを余儀なくされます。(部品が実装された)プリント基板は現地企業から調達すればよいという考えで進出してみたら、そのような現地企業は見当たらず、結局日本などに基板の供給を依頼する、ということになってしまうのです。

 マツムラ電子工業のような企業が現地で育ってくると、電子機器メーカーのベトナム進出へのハードルは格段に下がります。同社のベトナム工場は2012年12月にオープンしたばかり。機器メーカーの関心は高く、毎週、視察に来る人は絶えないといいます。別の機会に、同社の取り組みや、ベトナムの状況について報告したいと考えています。