軍配は韓国Samsung Electronics社に上がった。米Apple社によるスマートフォン関連の標準必須特許(以下「必須特許」)侵害などを米ITC(国際貿易委員会)が調査していた件(337-TA-794調査)である。正式決定が4度延期されて2013年5月31日に発表のはずが、さらに2営業日延期されて6月4日に下った。5度に及ぶ延期の末に出されたのは、Apple社の違反(関税法337条違反)を認定したものだった。ITCは、Apple社製品によるSamsung社の必須特許である米国特許7,706,348(以下「348特許」)の侵害を認め、侵害製品の米国への輸入を禁じる排除命令と、同製品の米国内での販売・流通を禁じる停止命令を発した。侵害認定の対象は、「iPhone 4」「iPhone 3GS」「iPhone 3G」「iPad 3G」「iPad 2 3G」である。最新機種「iPhone 5」と一つ前の「iPhone 4S」は対象外である。

 この794調査は2011年8月1日にSamsung社の訴えで始まった。その経緯と当事者の主張については、本連載の4月9日付け記事「決定を4度延ばしたITC、軍配はAppleかSamsungか(2)」で詳しく説明した。併せて参照していただきたい。

 今回の決定を意外に思った読者も多いのではなかろうか。本連載の4月9日付け記事「決定を4度延ばしたITC、軍配はAppleかSamsungか(3)」で説明したように、米議会、米FTC(連邦取引委員会)、司法省、連邦裁判所は、「FRAND特許による排除命令あるいは差し止め命令の請求は自動的に否定されるべき」というApple社寄りの意見で大勢を占めていた。それだけに、ITCが必須特許の侵害を理由に排除命令を請求するSamsung社の主張を受け入れるのは難しいだろうと考えるのが自然だ。

■変更履歴
このページの最後の段落で、「米FTC(連邦通信委員会)」としていましたが「米FTC(連邦取引委員会)」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/06/10]