待ちに待った判決がついに出た。米国ワシントン州西部地区連邦裁判所におけるMicrosoft社対Motorola社訴訟で、James L. Robart判事は、Motorola社の標準必須特許(以下「必須特許」)のロイヤルティ料率を決定する判決を2013年4月25日に下した(事件番号10-cv-01823)。裁判所が認定したのは、Motorola社の請求額の2000分の1以下だった。

 必須特許に係る訴訟が多発する中で、公正で、妥当かつ非差別的な(Fair, Reasonable and Non-Discriminatory;FRAND)料率についての解釈の相違が大きな争点となっている。しかし、これまで米地裁にしても米ITCにしても具体的な料率にまで踏み込んで判決するには至っていなかった。今回の判決は、FRANDロイヤルティ料率の算定という難題に果敢に挑戦し、初めて回答を与えたという点で歴史的な価値がある。しかも、最初の試みというだけにとどまらず、決定打と言ってよいほどに熟慮され、理路整然とした法的枠組みを提示することに成功している点で画期的だ。この判決を契機として、一連の“スマホ特許訴訟”をはじめとする必須特許にかかわる多数の訴訟は、いよいよ解決に向けて大きく動き出すことになろう。

 本稿では、この1823事件の経緯と判決内容を概説し、その判決による今後の影響について述べる。