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伝説の日本人セールスマン(3)

永井麻生子=おあしすランゲージラボラトリー代表
2013/06/17 00:00
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今回紹介する書籍
題名:魔鬼成交之原一平的66条黄金法則
著者:袁梅苹
出版社:江蘇美術出版社
出版時期:2013年2月

 今月の本コラムでご紹介しているのは『魔鬼成交之原一平的66条黄金法則』(日本語訳:鬼神とも取引する原一平の66の黄金ルール)。明治生命のトップセールスマンだったという原一平氏。日本ではさほど有名な人物ではないが、中国のビジネス書を読んでいると、よく彼のエピソードが引用されている。中国版ウィキペディアというべき「百度百科」でも彼に関する記述は大変詳細だ。また、原一平氏に関する書籍も、日本では1作しか出版されていないのに、中国語の書籍は4~5作品あった。なにか中国に特に縁のある人物なのかと思ったが、経歴を見ても特に中国と関連が深いというわけではなさそうである。ということは、原一平という人物の中に何か中国人の琴線に触れるものがあるのではないか、と思い、本作品を読んでみた。

 本コラムでも何度か指摘している通り、中国人はエピソード好きだ。本書には中国人が好みそうなエピソードがふんだんに納められている。

≪エピソード1≫
 当時、原氏には会いたいのだがなかなか会ってくれない経営者がいた。そこで原氏は一計を案じ、その経営者の家に出入りする雑貨屋に経営者が利用しているクリーニング店はどこかを聞いた。そこでそのクリーニング店と親しくなり、その経営者がどんな服を持っているかを教えてもらった。そして、彼はその経営者の持っている服と似た格好をしてその家を訪ねた。するとその経営者は彼の“思い付き”を面白がって、長く続く客になってくれた。

 このように、原氏のエピソードは「難しくはないがちょっと変わった思い付きが成功に結びつく」というものが多い。そして、そういったタイプのエピソードこそ、中国のビジネス書でウケるのである。そう考えると原氏の中国での人気も納得できる。

≪エピソード2≫
 原氏が当時会いたいと思っていた人物は、周囲の評判を聞くと「偉そう」「傲慢」とあまり付き合いやすい人物ではなかった。ある日、原氏はその人物のオフィスに出向き、面会できることになった。しかし、相手は原氏が部屋に入ってもちらっと原氏を見ただけで、書類から顔を上げようとせず、仕事を続けていた。そこでカチンときた原氏は「私は原一平と申します。本日はお邪魔しました。これで私の『一分間訪問』を終わります。また次回お目にかかりましょう」と言って退室しようとした。すると、相手は「なんだって?」といったが、原氏は「失礼いたします」と言って部屋を出た。帰り際に原氏は「私は先ほど受付の方に『一分時間をください』と言って通していただきました。もうその時間を使い切ってしまったので、帰らせていただくのです。ありがとうございました。また日を改めてうかがいます」と言ったが、部屋を出た原氏は冷や汗で全身ぐっしょりと濡れていた。数日後、原氏は再びこの相手を訪ねた。すると相手は「この前はどうしてすぐに帰ってしまったんだ?君は面白い男だな」といい、商談が進んだという。

 本書では66ある「黄金法則」のほぼすべてに関してこのようなエピソードが述べられている。ここに挙げたエピソードはどちらも一般的な日本人からするとやや個性的すぎるような気がするが、中国のビジネス書ではこのようなエピソードが好まれる。その点から見ても、原一平氏の個性は中国人にとって魅力的なのだろう。日本人に比べ、個性が強く、ややもすると危なっかしく感じられる人物像が中国人の好みなのかもしれない。

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