今回紹介する書籍
題名:魔鬼成交之原一平的66条黄金法則
著者:袁梅苹
出版社:江蘇美術出版社
出版時期:2013年2月

 先週の中国の書籍販売サイト「当当網」のフィクション部門では村上春樹氏の『ノルウェーの森』が1位になっていた。稲盛和夫氏の著作が中国で人気だ、という話を聞いたことのある読者も多いはずだ。このように、中国でも日本の書籍は注目されているし、日本のビジネスマンや歴史上の人物(徳川家康など)にスポットライトが当たることも少なくない。

 では、読者の皆さんは原一平という人物をご存じだろうか。モノマネ芸人に同姓同名の方がいるそうだが、その方はこのコラムでご紹介したい原一平氏ではない。ここで取り扱う原一平氏はなぜか中国で日本よりも知名度が高い伝説のセールスマンだ。

 その原一平氏の「セールス黄金律」を開設したのが、今月ご紹介する『魔鬼成交之原一平的66条黄金法則』。日本語にすれば「鬼神とも取引する原一平の66条の黄金法則」というぐらいの意味になるだろうか。中国で出版されている原一平に関する書籍は本書だけではない。ざっと見ただけで数冊あり、評論などを公開するサイトでも原一平氏に関する論文やレポートの数は決して少なくない。

 本コラムで紹介してきた多くのビジネス書においても「日本の有名な保険セールスマン」として原一平氏の名が挙がっていた。筆者が初めて原氏の存在を知ったのも中国の書籍であった。「日本の生命保険業界には原一平という伝説のセールスマンがいて、その人のエピソードは…」という形で、いままで何冊ものビジネス書の中で原氏の功績やエピソードに触れてきた。ところが、この原一平氏、まさに海外で名を馳せているというのに、日本で彼に関する記事などを見たことがほとんどない。たとえば日本語のウィキペディアには原一平という項目はないが(上記の芸人の原一平氏の項目はある)、中国版ウィキペディアともいえる百度百科には原一平氏の項目がしっかりある。このように、日本ではまさに知る人ぞ知る存在にすぎない原氏だが、中国では「伝説のセールスマン」としてしばしば言及されているのである。

 今月は、『魔鬼成交之原一平的66条黄金法則』を読み解きながら、原一平氏についてご紹介するとともになぜ彼が中国で人気なのかを考えてみたい。

 セールス手帖社保険FPS研究所のサイトによれば、原氏は1904年生まれ、1930年に明治生命保険相互会社入社、1962年に全日本生命保険外務員協会(略称:全外協、現・生命保険ファイナンシャルアドバイザー協会)を設立し代表理事に就任、1964年には国際アメリカン協会からアカデミー賞及びフェローシップ賞を受賞、さらに1971年全外協初代会長に就任、1976年勲四等旭日小綬章受章、1984年に80歳で逝去、となっている。

 一言で言えば生命保険業界の発展に一生をささげた人物、ということになろう。

 本書ではその原氏の言葉を用いて、セールスの極意とでもいうものを解説している。次週からは原氏の言葉から「伝説のセールスマン」の仕事術を探ってみる。その中から、原氏のどのような部分が中国人の心をつかんでいるのかを考え、さらに中国人は日本人から何を学ぼうとしているのかを考えてみたい。