英Dyson社のワークショップで、デザインと技術を洗練させる「デザインエンジニア」の存在を知った東京大学と東京芸術大学の学生たち(前回参照)。James Dyson氏がサイクロン式掃除機を開発したエピソードなどを通じて、その重要性の理解を深めた。そして、学生たちは自ら試作することでデザインエンジニアの仕事を体感する。日本のメーカーで一般に実施されている試作とDyson社における試作の違いも、ここから見えてくるかもしれない。

1:00p.m. 「解決策を考えながら試作するテーマを絞り込む」

 共に昼食を取って結束を固めた学生たちのチームは、普段の学生生活ではなかなか体験できない取り組みに挑むことになった。前回紹介したアイデアの発想と試作のプロセスである。簡易的な試作によってアイデアの良い点・悪い点を早期にあぶり出すというプロセスを、午後の2時間ほどで実践するのだ。

 ワークショップの講師を務めるダイソン シニアデザインエンジニアのAndrew McCulloch氏から、2時間の大まかなスケジュールが提示された。学生たちは、事前に身近な“フラストレーションの種”を考えておくように課題を与えられている。

 まず、最初の15分はチーム内で全員がそれを披露した上で、2~3のテーマに絞る。次の15分は、それらのテーマの解決策を議論しながら、試作の対象とするテーマを1つに決める。さらに、その次の15分は、解決策を実現する物の構造をスケッチしたり、図面を作成したりする。そして、60分ほどで試作品を作製していく。残りの15分は、講師や他チームへのプレゼンテーションの時間だ。

試作のために用意された素材・道具
試作のために用意された素材・道具
試作のために用意された素材・道具

 各チームは早速議論を始めた。自分が日頃感じているフラストレーションについて説明するところまでは順調だったが、その後の議論ではなかなか前進できないチームが現れた。テーマを絞り最終的に1つに決める段階で少しずつ差が出てきた。

 開始から45分が経過し、いざ試作に取り掛かる時間になっても、すぐに席を立ったのは2~3チームほど。そこからさらに20分経ってもまだ議論を続けているチームもあった。たとえ身近なテーマであっても、他者と議論して結論を出すことの難しさがうかがえる。そうした状況もあり、試作の時間は60分から75分に延長された。

アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子

アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子
アイデアの発想および試作の様子