マルチフィジックスの土台に

 機構解析はまた、構造解析、熱流体解析、疲労解析など、さまざまな解析計算と連成させる「マルチフィジックス」解析の際のベースとするのに適している。もともと複数部品から成るユニットを対象とすることから、製品全体を表現したモデルを構築するのに向いているためだ。これをベースとして力やトルク、変位などの計算結果を他の解析ツールとやり取りすれば、連成が可能になる。同じように製品全体を表現できるツールに、いわゆる1Dシミュレーション・ツールがあるが、機構が多い製品でより細かい現象を調べる上では機構解析の方が適する。あるいは、機構解析と1Dシミュレーションを組み合わせることも考えられる。

 さまざまな解析ツール間でリアルタイムに力や変位をやり取りする際の規格として、2010年に「FMI(FunctionalMockup Interface)が制定された。複数のコンピュータ、または同一コンピュータ上の複数の解析ツールが物理量をやりとりして連成解析を実行するためのものだ*2。FMIには、「Adams」「LMS Virtual.LabMotion」「SIMPACK」などの機構解析ツールの他、「MATLAB/Simulink」(米Mathworks 社)、「LMS Imagine.Lab AMESim」(ベルギーLMS International社)、「Dymola」(仏Dassault Systemes社)、「MapleSim」(米Maplesoft社)などの1Dシミュレーション・ツールも対応し始めている。

*2 FMIによって、別々のコンピュータで実行中の解析計算同士を通信させることも可能。TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などを用いる。

 前述のような、機構解析同士の“連成”にも、FMIを利用できる。すなわち、個別のユニットの深い機構解析と、製品全体の広く浅い機構解析をそれぞれのモデルで実行し、互いにFMI経由で通信させれば、広く深い解析を手軽に実行できる。「少しトリッキーだが、AdamsとAdamsの“連成”も十分現実的な方法」(エムエスシーソフトウェア)という。

■変更履歴
掲載当初、FMI(FunctionalMockup Interface)がISO規格であるとしていましたが、誤りでした。お詫びして訂正します。