先日、電子情報技術産業協会(JEITA)の電子部品部会が開催した部会長記者懇談会に参加しました。部会長である村田製作所 代表取締役社長の村田恒夫氏が、電子部品業界の動向と取り組みを説明した中で示した、日系電子部品メーカーの世界シェアの推移が印象的に残りました。日系電子部品メーカー、“手堅い”です。

 2013年見通しにおける日系電子部品メーカーの世界シェアは38.5%。電子部品業界は汎用品を中心に中国や台湾、韓国メーカーとの競争が激化し、日系電子部品メーカーのシェアは低下傾向にあるとされます。確かに、2008年における日系電子部品メーカーのシェアは41.0%だったので、2.5ポイント減る見通しです。ですが、2011年に比べて0.6ポイント減、2012年比で0.2ポイント減ですので、「シェア4割をキープしている」といっても過言ではありません。

 一方、他の業界での日系メーカーの世界シェアはどうでしょうか。2008年実績と2013年見込みを比較すると、電子工業全体で26.0%から20.8%へと5.2ポイント減。個別に見ると、電子部品と同じく高い世界シェアを誇ってきたAV機器で45.6%から41.1%へ4.5ポイント減、通信機器は14.0%から9.4%へ4.6ポイント減、ディスプレイ・デバイスは25.3%から16.0%へ9.3ポイント減、半導体は23.8%から17.9%へ5.9ポイント減の見通しです。ほぼすべての分野でシェアが大きく減少する中、電子部品は比較的健闘しているといえます。

 電子部品部会長の村田氏によれば、日系電子部品メーカーは付加価値の高いカスタム品で強みを発揮しているとのこと。海外生産比率を上げて、コスト競争力を高めてきたことも見逃せません。しかも、国内生産を諦めているわけではありません。海外生産比率は2011年が65.1%、2012年が65.3%、2013年(見込み)は66.1%と徐々に上がってはいるものの、付加価値の高いカスタム品を中心に34%程度は国内で生産し、国内生産品のうち約2/3を輸出しています。

 「付加価値の高い製品は国内で生産し、コスト競争が厳しいところは海外生産比率を高めて勝負し、世界的な存在感(シェア)を示し続ける」という構図は、日本の製造業が進むべき姿を象徴しているといえます。こうした構図を続けるためにも必要なのが、新市場創出といった次なる高付加価値品の発掘です。今は付加価値が高い品種であっても、いずれはコモディティー化するのが世の習いですから…。

 電子部品部会で注目するのが、医療/ヘルスケア、電気自動車(EV)などの電動車両、エネルギー、そしてそれらも絡んでくるスマート・コミュニティーなど。ご存じのように、これらの分野に注目するのは電子部品業界だけではありません。サービス事業者、機器メーカー、半導体メーカー、素材メーカーといった電子工業関連の業界のみならず、建設業界、医療業界など関係しない業界はないというくらい多岐にわたります。それぞれの業界、メーカーごとに得意分野を引っ提げて新市場に乗り込もうとするものの、1社や1業界で完結するようなことはまずありません。サプライ・チェーンの構築も、まさにこれからといった形です。

 電子部品メーカーが、主導することだって可能です。先日、ある大手電子部品メーカーの幹部と話す機会があり、その一端を垣間見ました。ゼネコンや医療関係者など、電子部品を直接納入しない業界の関係者と密に連絡を取っているとのこと。新分野ですから、電子部品メーカーの納入先である機器メーカーからは必ずしも有益な情報が得られるわけではありません。電子部品メーカーの強みのある技術を生かしたソリューションをゼネコンや医療関係者などに披露して協力を取り付け、そしてこれら関係者から機器メーカーに対し「電子部品メーカーA社のソリューションを使うように」と発注する流れをつくるというものです。このあたりも、電子部品メーカーはしたたかです。