JSAE(自動車技術会)の春季大会で、中国、韓国、日本の自動車メーカーがパワートレーン戦略を紹介する「日中韓自動車フォーラム」を聴いてきました。中国の第一汽車、韓国のHyundai Motor社が互いに一致していたのは、過給ダウンサイジングエンジンに力を入れるという方針です。

 第一汽車のR&DセンターPresidentでFISITA(国際自動車技術会連盟)のPresidentでもあるJun Li博士は、同社がA、B、Cセグメント別に、排気量1.0~2.0Lまで四つの直噴ターボ過給ダウンサイジングエンジンを用意していると述べました。さらにそれぞれのセグメント別にDCT(Dual Clutch Transmission)があり、当面はターボエンジン+DCTで燃費を改善するつもりです。

 また、これらのエンジン、変速機はモータを追加すれば簡単にパラレルハイブリッドシステムを実現できるモジュラー構造を採り入れました。2014年には「Blue Way」と呼ぶ同社の環境ブランドに対応した低燃費のエンジン車を導入し、その翌年の2015年には1モータハイブリッドのHEV(ハイブリッド車)を投入する計画とします。

 一方、Hyundai Motor社はSenior Vice PresidentでGasoline Engine Development Groupを担当するWoo Tae Kim博士が、ガソリンエンジン技術について講演しました。同社は現在、0.8~5.0Lのエンジンラインアップを擁していますが、過給ダウンサイジングを狙った直噴ターボエンジンとして1.0L、1.6L、2.0Lの3種類をそろえています。発表では触れませんでしたが、同社はDCTも市場に導入しており、「Veloster」の1.6Lターボで既に採用しています。

 同博士は、今後はダウンサイジングとダウンスピーディングのコンセプトを直噴ターボエンジンで実現し、さらに希薄燃焼の適用や熱エネルギを効率的に利用することで熱効率を高めていくとします。また、こうしたエンジンには連続可変バルブリフト機構や気筒休止機構、可変圧縮比などを組み合わせていく方針です。特に、気筒休止については現在開発中とし数年程度で実用化することを見込んでいるようです。

 ここで出てきた、直噴、ターボ過給、DCT、気筒休止などのキーワードで思い浮かべるのは、これらを一足先に実現したドイツVolkswagen社の戦略です。第一汽車はVolkswagen社と合弁事業を展開しているので、その影響を受けるのは自然な流れと言えますが、Hyundai社もVolkswagen社の後を追っているようです。特に、彼らが重視しているのは、燃費向上効果に対するコスト増の割合が少ないことであり、電動化についてはコスト増が大きいため、なるべくエンジン技術で燃費を伸ばしたいと望んでいます。新興国では、燃費規制にもよりますが、当面エンジン車が主流となるので、こうした志向は低価格を望む顧客ニーズにも合っているのでしょう。

 日本メーカーは電動化に早くから取り組んでおり、世界の競合メーカーよりも“安く”HEVを作れるノウハウを持っています。しかし、HEVの市場はやはり先進国中心という事情を考えると、新興国における中小型車での燃費競争を戦うため、過給ダウンサイジングエンジンにも取り組む必要があるのではないでしょうか。