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 今からちょうど1カ月前の2013年4月26日。266の店舗などが集まる巨大な複合施設「グランフロント大阪」が、大阪駅の北口にオープンしました。オープン後3日間で約100万人が訪れるなど、関西地方で話題の施設になっています。

 実は、このグランフロント大阪に、位置情報関連の技術者が熱い視線を送っています。それは、グランフロント大阪に導入された会員向け情報提供サービス「コンパスサービス」で、屋内測位技術が使われているからです。

 グランフロント大阪のような商業施設は、各地で次々と誕生しており、競合施設との差異化が課題になっています。そこでグランフロント大阪では、差異化の一つの手段としてコンパスサービスを導入したのです。会員の施設内での行動に合わせて最適な情報を提供することで、「この施設で買い物をしたい」と感じてもらうのが狙いです。

 この“最適な情報の提供”を陰で支えているのが、屋内測位技術になります。これまでの情報提供サービスは、会員の属性や購買履歴などしか参照できませんでした。これに対してコンパスサービスでは、現在の位置情報や過去の位置情報の履歴なども活用することで、現在の状況や潜在的な欲求を推定して最適な情報を提供できるとします。

 屋内測位には、無線LANを利用しています。無線LAN基地局の電波をスマートフォンで受信して測位する仕組みです。通信用に設置した無線LAN基地局を活用できるため、導入費用を低く抑えられるのが選択の決め手になりました。グランフロント大阪では今後、無線LAN以外の屋内測位技術も試していく予定です(日経エレクトロニクス 2013年5月27日号 特集「歩み出す屋内測位」参照)。

 屋内測位技術の実用化は、これまでなかなか進みませんでした。その理由の一つが、初期投資を誰が負担するのかという課題があったからです。今回グランフロント大阪では、「コンパスサービスで施設の魅力が高まれば、テナントの入居率が高まる」として、建物のオーナーが初期投資を負担しました。

 この他の課題である、収集した位置情報をどのように扱うべきかについても、議論が進んでいます。2013年5月には、経済産業省と総務省のそれぞれの研究会が、個人に関する情報(パーソナルデータ)をどのように扱うべきかを議論した報告書が相次いで公開になりました。今後、パーソナルデータの扱いのルールが明確になれば、屋内測位技術の採用がさらに広がりそうです。