大学全入時代と言われ、大学の入学希望者の総数が入学定員の総数を超えているといわれています。以前よりも多くの割合で学生が大学に入学する時代ですから、大学はもっと職業訓練学校のように、仕事で直接的に役に立つスキルを学生に教えるべき、とも言われています。

 ただ、これだけ技術の変化が激しい時代では、ある仕事だけに特化したスキルを身につけても、大学で学んだ技術で一生食べていくことは、難しいでしょう。

 むしろ、自分のスキルが特定の仕事に特化してしまう方が、その仕事が無くなった場合を考えると、リスクが大きいのかもしれません。ITやエレクトロニクスの技術の発展で、多くの仕事が機械やコンピュータに取って代わられました。

 例えば、自動改札機の導入によって、駅の切符を切る業務はなくなりました。ソーシャルメディアの登場で、新聞やテレビなどのメディアも厳しい状況になっています。

 では、大学では何を学ぶべきでしょうか。スキルには、時代背景や技術の進展で変わるものと、変わらないものがあります。大学で学ぶスキルには、その両方があります。一般的なスキルだけを学ぶ、というのは、難しいと思いますが、少なくとも、自分が学んでいることが、どの程度一般的なものか、常に考える必要はあるでしょう。

 例えば、私が所属する工学部でいうと、コンピュータの仕組みというのは、この何十年も変わっていません。スーパーコンピュータから、パソコン、タブレット端末、スマートフォンと、性能や形、価格は違っていても、基本的な動作原理は同じです。

 また、「これから魅力的な職業はデータサイエンティスト」とも言われるように、経営やマーケティング、医療など、あらゆる分野に統計的な手法が導入されようとしています。この確率や統計は、理系で実験をしたことがある人ならば、誰でも使っている、ごく一般的なスキルです。

 一方、時代で変わっているのは、動作原理を実現するための実装の仕方や、ビジネスモデル。例えば、大学で学んだり、企業で実践する技術の多くは、いまや、目的ではなく、商品やサービスを実現するための、一つの手段になりつつあります。