家電の王様「テレビ」は最近、すっかり悪者扱いされるようになった。

 2011年3月まで続いたエコポイント制度や、同年7月の地上デジタル放送への完全移行による特需の反動で、テレビの国内出荷台数は大きく減少。電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、2012年度の出荷台数は576万6000台と前年度に比べて65.3%減った。出荷額も、同56.7%減の7795億円と低調だ。

テレビ・メーカーは「スマートテレビ」でテレビの地位復権を目指す。写真は、Samsung Electronics社のスマートテレビのデモ。
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 ソニーやパナソニックなど国内の大手家電メーカーのテレビ事業は赤字続き。業績悪化の最大の戦犯というレッテルを貼られている状況である。直近では急減する国内市場が足を引っ張ったことに加えて、世界市場の拡大がストップしたことも追い打ちをかけている。

 液晶テレビの世界出荷台数は2012年、初めて前年割れした。米調査会社のNPD DisplaySearch社によれば、同年の液晶テレビの出荷台数は前年比1%減の2億320万台。頼みの綱と期待が大きい新興国市場の伸びでは、先進国の大幅な需要減をカバーできなかった。韓国Samsung Electronics社の2013年1~3月期は、テレビを含む家電部門が前年同期比52%減の営業減益。世界シェア・トップの同社ですら、テレビ事業の利益は決して高水準ではないとの見方がある。

消費者にとっては悪者ではない

 そして、誰ももうからなくなった。

 そんな声すら聞こえてくるテレビだが、消費者サイドの声を聞いた調査からは将来に向けた期待感が見えてくる。

 米Accenture社が2012年9月に世界11カ国の1万1000人の消費者を対象に実施した調査では、対象者の33%が2013年に購入を予定するデジタル家電として「テレビ(HDTV)」を挙げた。前年の同じ調査に比べ13ポイントの増加である。この割合は41%が購入予定と回答したスマートフォンより低い水準ではあるものの、同じく23%のタブレット端末に比べると高い結果だ。

 Accenture社はこの調査で、デジタル家電分野では多機能製品の購入意欲が高いと結論付けている。デジタルカメラや家庭用ゲーム機、Blu-ray Discプレーヤーといった単機能製品を購入するという回答は10%前後と総じて低かったからだ。

 同社の担当者は「消費者は、テレビをスマートフォンと同列に見ている」と分析する。「インターネット接続機能を備えた多機能端末としてのテレビへの期待感が調査結果に反映された」という。こうした消費者による期待を取り込み、テレビの地位を復権しようとする模索が世界的に活発になっている。

 いわゆる「スマートテレビ」である。