大部屋を活用する上で必ず問題となるのは、遠隔地からの参加です。理想は同じ場所で実際に顔を突き合わせることですが、昨今の開発環境のグローバル化によって難しい場合が増えてきました。そこで必要になってくるのが大部屋の「デジタル化」です(図1)。

図1●デジタル化のためのソリューション
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 遠隔地からの参加以外にも、大部屋のデジタル化が有効となる状況はあります。例えば、製品コストなど機密情報を扱う場合や、最新のデータを共有・一元管理したい場合、参加メンバーの増加に伴い指標が多様化する場合(1人当たり3種類でも、10人が参加すれば最大で30種類もの指標を表示しなければならない)なども、デジタル化が必要なケースとして挙げられます。

 筆者は、数年前に米国のメーカーの大部屋活動を支援していた際、大部屋活動がかなり成熟した段階でデジタル化に挑戦しました。大部屋の壁の一部に大型の液晶ディスプレイ(LCD)を組み込んで、指標とCADの製品情報部分の2項目をデジタル化するところから始めました。ただし、これは大部屋の会議において、2台のPCを2人で連携を取りながら操作してLCDに表示するという、人手に依存したものでした。それ以外の部分では、これまで通り付箋紙やプリントした大日程などを用いました。

 他にもテレビ電話会議を組み合わせるなどの取り組みを行いましたが、やはり顔と顔を突き合わせる大部屋のようにはいきませんでした。当時は「Excel」でデータのやり取りをするなどの試行錯誤が続いており、リアルタイムに最新情報を瞬時に共有するという本当の意味でのダイナミズムを実現できなかったことが原因です。

 その後もいろいろなPDM(Product Data Management)ソフトやPLM(Product Lifecycle Management)ソフトを研究しながら使いました。当時、IT企業各社は大部屋をデジタル化すべく、さまざまな機能を提案していました。しかし、システム寄りの発想に基づいた「大部屋」のデジタル化には設計現場の視点が欠けており、どれも期待したようには動かなかったのです。そこから年月が経ち、現在筆者が所属するダッソー・システムズの最新のソフト群は、筆者の期待にかなり近いものになっています。