【図1】ソニーの「VAIO Duo 11」のヒンジ部。本体側から取り外した状態(ディスプレイ部の背面に組み付けてある)。
【図1】ソニーの「VAIO Duo 11」のヒンジ部。本体側から取り外した状態(ディスプレイ部の背面に組み付けてある)。
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【図2】ソニーの「VAIO Duo 11」の本体部の底面を取り除いた状態(手前の銀色部分がキーボードの裏面)。右上と左上に、ヒンジ部が組み付けられているのが、フレーム部品の向こう側に見える。図1のヒンジ部は、この写真の右上に取り付けられている。
【図2】ソニーの「VAIO Duo 11」の本体部の底面を取り除いた状態(手前の銀色部分がキーボードの裏面)。右上と左上に、ヒンジ部が組み付けられているのが、フレーム部品の向こう側に見える。図1のヒンジ部は、この写真の右上に取り付けられている。
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 2013年5月号の特集2(関連URL)では、タブレット端末としても、キーボードがあるノートパソコンとしても使える、いわゆるハイブリッド型パソコンの変形機構を解説しました。近年のエレクトロニクス化の進展で、多くの製品から「動く部分」が少なくなってきています。そんな中、ハイブリッド型ノートパソコンには、からくり的な、思わず「なるほど」とうなってしまう工夫が満載で、とても楽しく取材させていただきました。

 ハイブリッド型パソコンを各メーカーが相次いで製品化したのは2012年の秋以降のことです。狙う市場、想定する使われ方もさまざまで、市場が成熟していないこともあり変形機構は各社各様。だからこそ、その仕組みの実現には自由な発想と多くの創意工夫が込められているのだと思います。

 記事では変形機構の仕組みにフォーカスしたため、ほとんど触れられなかったのですが、これらの機構を組み込むスペースを確保するには各社苦労されたそうです。特に、今回大きく取り上げたソニーの「VAIO Duo 11」や東芝の「dynabook R822」といったスライド式の変形機構では、それを実現するための部品が大きくなってしまいます。

例えば、VAIO Duo 11。ヒンジ部は設計の工夫で最小化したものの、それなりの大きさになってしまいました。設計の初期段階では、このヒンジ部を組み込むスペースを確保するため、コネクタ類を本体側面の手前側に配置しなくてはならなくなったそうです。

 しかし、タブレット端末としての利用を考えると、手で隠れる可能性が高い手前側(下側)にコネクタ類があるのは好ましくない、と設計変更することになりました。この段階で既にぎりぎりのレイアウトだったものを、ヒンジ部の形状を調整しつつ、その搭載位置を少しだけ内側に寄せ、なんとかコネクタ類を側面の奥側に配置するスペースを確保したとのことでした。

 タブレット端末やノートパソコンとして使われることを考えた時の、薄さや軽さといった商品価値に影響する仕様に配慮しながら、新しい機構を組み込むことはかなり大変だったに違いありません。しかも、このような複雑な仕組みの導入は生産工程にも大きな影響を与えます。「安曇野(長野テクノロジーサイト)で設計と生産が近くにいたからこそ、この製品を実現できた」というソニーの方の言葉も印象的でした。