ベンチマーク対決とクラスタリングのノウハウ蓄積

 スパコンの案件に限らず、顧客がシステムを買う時は実証実験を必要とする場合があります。この案件でも、実証実験による性能を示すことが必要とされました。ベンチマークテストです。

 筆者は当時、ベンチマークのスキルはゼロだったので、会社の先輩や上司に助けてもらいながら、進めていくことになったわけです(笑)。この顧客は、流体解析のアプリケーションを動かす予定になっていたので、そのアプリケーションの性質によく似たとあるベンチマークテストを実行することになりました。それが「姫野ベンチマーク」というものでした。

 この姫野ベンチマークは、理化学研究所情報基盤センター・センター長の姫野龍太郎氏が、非圧縮流体解析コードの性能評価のために考えたものです。ポアッソン方程式解法をヤコビの反復法で解く場合に、主要なループの処理速度を計るもの。――と言われても何のことやらさっぱり、となる方も多いと思います(当時の筆者もそうでした)。簡単に言えば、これは流体解析に使用するある解法を使ってコンピューターの性能値(MFlops:百万浮動小数点命令/秒に相当)で表示してくれるものです。

 姫野ベンチマークは、誰でも自由にソースコードをダウンロードして実行することができます。Windows版に限ってはバイナリコードも存在しており、どのPCでも気軽に性能が測定できるものとなっています。