機能的価値だけでは過当競争に

 とはいえ、「相関がゼロなのだから、ものづくりをやめる」という方向で取り組んでは、日本メーカーの強みを打ち出せない。ものづくりの力を最大限に活用して、いかに価値をつくり出すかを日本メーカーは問われている。大切なのは、「付加価値」という言葉の意味を真剣に見直すことだ。新興国市場の攻略では、ボリューム・ゾーン向けに価格を下げることに加え、付加価値の創出が大切である。この点は、先進国市場の攻略と何ら変わらない。

 経営学における付加価値とは、メーカーで言えば、原材料から製品になるまでに上乗せする価値である。つまり、「安く作って、高く買ってもらう」ための要素が付加価値と言える。ただ、必ずしも高価格の製品を投入するという意味ではない。例えば、ユニクロの洋服は低価格だが、経営から見た付加価値は高い。

 顧客にとっての価値は、大きく二つに分類できる。「機能的価値」と「意味的価値」である。二つの価値の合計によって、顧客が払ってくれる価格が決まる。

 機能的価値は、顧客が客観的に評価できる機能がもたらす価値である。例えば、デジタル・カメラならば、撮像素子の画素数やズーム倍率、手ぶれ補正といった性能や機能などが考えられる。ただ、製品が備える機能が顧客の求める水準を超えると、価格競争が始まる。今、薄型テレビをはじめとするデジタル家電は、まさに過当競争のフェーズにあると言っていいだろう。(談)