これを実現するには、それぞれの国や地域に合った価格帯や機能の製品を作る必要がある。自社にその価格帯で最高品質の製品を作る手段がないのであれば、現地で売れている製品を開発しているトップ企業と、M&A(合併・買収)を視野に入れた提携を進めるべきだろう。普及価格帯の製品開発を現地企業に任せられれば、日本メーカーは比較的高い価格帯の上位機種の開発に専念できる。

 自社で無理に低価格品の開発を手掛けるようになると、“永遠の価格競争”に巻き込まれる。ゆっくりと時間が流れていた時代はそれでもよかったが、今は企業が摩滅するまで競争が進む。情報の伝達スピードが速いため、多くの現地メーカーが低価格品を作れるようになるからだ。

 もちろん、現地企業との連携は、決して普及価格帯で「安かろう、悪かろう」という商品を売るためではない。日本メーカーの技術を持ち込めば、製品の品質は必ず向上する。大きな利点は、現地で安価に部品を入手するノウハウを取り込めることと、現地の生活者ニーズを把握できることにある。これが地産地消の意味だ。

現地企業に学ぶスタンスが大切

 現地企業との協力関係は、日本メーカーが教えてもらう立場で築かなければうまくいかない。仮に、現地企業の技術が自社よりも遅れていたとしても、その企業の製品は現地で売れているのだ。「なぜ、売れているのか」を真摯に学ぶスタンスが必要だろう。現地の顧客目線で製品を開発するノウハウは、自社で開発する高価格帯の機種に生かせる。いずれ、新興国の生活者の多くは、高価格帯の機種を購入できる顧客になる。(談)