工場現場のオートメーション技術として、プロセス・オートメーション(PA:Process Automation)は、ファクトリ・オートメーション(FA:Factory Automation)とは別の形態で進化してきました。

 プロセス産業は一般に素材産業とも言われて、概念的には「原料に熱と圧力を加えて、組成を変化させて、製品を造る」、つまり原油からナフサを造るとか、鉄鉱石から鉄を造るような製造業と考えられます。このため、PAの計測データは、温度、圧力、流量、レベル、成分といったアナログ量が多くなり、接点を通した入出力が多い組立産業のFAと異なっています。

 もともとPAは米国テキサスの石油精製産業を中心として発展してきたので、同じオートメーションといっても米国デトロイトの自動車産業が中心となっていたFAとは違いがあるわけです。

 PAの大きな特徴としては、制御の信号種類がFAとは異なる他に、以下のような事柄が挙げられます。

(1)制御周期はそれほど高速を要求されない。多くの場合、1秒周期で十分である

(2)石油精製などの場合、定値制御が基本となる。制御方式としてはPID制御*1を使う

(3)FAの場合、電源の遮断などにより機械や設備を止められるので、基本的には安全を確保できる。ところが、PAの場合、装置を止めても化学変化が暴走することがある。したがって、測定器や操作器(後述)で化学反応をできる限り監視・制御できるように、冗長化などでそれらの運転を可能にしておきたいという要求がある

*1 PID制御 フィードバック制御の1つの方式。制御システムへの入力値を、出力値と目標値の偏差〔Proportinal(比例)〕、同偏差の積分値〔Integral(積分)〕、同偏差の微分値〔Differential(微分)〕といった3つの要素の組み合わせで制御するやり方。

 こうしたPAですが、その産業ネットワークとしては「HART」「Foundation Fieldbus」「PROFIBUS PA」の3種類があります*2

*2 HARTはHighway Addressable Remote Transducer Protocolの略。

 本コラムの第4回で示した産業用ネットワークのマーケットシェアのグラフを見ると、HARTとFOUNDATION Fieldbusのマーケットシェアは2%と4%となります。PROFIBUSのうちPA産業で使用されているネットワークは750万台でPROFIBUS全体の17%と言われていますから、マーケット全体では3.4%に相当します*3。これを足すと9.4%になります。他のネットワークのほとんどがFA系統ですので、PAのネットワークはFAと比べて少ないと考えられます。

*3 産業用ネットワークのマーケット全体に占めるにPROFIBUSの比率は20%。そのうちの17%がPA産業向けだから、0.2×0.17=0.034となり、PA産業向けのPROFIBUSはマーケット全体では3.4%となる。