2013年の年明け、エレクトロニクス業界で話題となったのが大画面の有機ELテレビでした。1月に米国ラスベガスで開催された民生機器の展示会「2013 International CES」で、ソニーとパナソニックが56型の4K×2K有機ELテレビやパネルの試作品を披露し、大いに注目を集めました。また、韓国LG Electronics社は1月2日に韓国で55型の有機ELテレビの注文を受け付けると発表し、2月から出荷を始めています。

 しかし、有機ELテレビを取り巻く熱気はその後、冷めつつあるように見えます。CESで脚光を浴びたソニーとパナソニックですが、春以降の大画面有機ELに関するニュースで目立つのは、ソニーが56型と30型の業務用4K×2K有機ELモニターを開発し、放送機器の展示会「2013 NAB Show」で技術展示したことのみ。家庭用テレビに関する動きは、鳴りを潜めています。

 韓国勢も、目立った動きは見せていません。LG Electronics社は4月29日に、画面が湾曲した55型有機ELテレビの受注を開始しました。ただ、価格は1500万ウォン(約135万円)と非常に高価。1月に受注開始した従来製品の約1100万ウォン(約100万円)を上回る価格であり、よりニッチの製品を強化している格好です。また、Samsung Electronics社からは、大画面有機ELテレビに関するニュースはほとんど聞こえてきません。

 4月下旬に韓国を訪問する機会があり、旧知の業界関係者にも会って何人かに話を聞いたのですが、大画面有機ELテレビにはコストの課題が大きく立ちはだかっているようです。家庭用テレビとして勝負するためには、20万円以下の価格を実現する必要があるという意見で、業界関係者はほぼ一致していました。しかし、現状では大型有機ELパネルの製造歩留まりが極めて低く、20万円以下の実現のメドは立っていないと、口をそろえて言います。

 そこで、当面は50型以上の4K×2K液晶テレビやパネルを目玉にしていく、という意見が大勢でした。2005年にHD液晶テレビ、2010年にフルHD液晶テレビの価格が20万円を切るようになり、本格的な普及が始まりました。2015年には50型以上の4K×2K液晶テレビを20万円以下の価格で実現し、市場を立ち上げていくシナリオです。

 大画面有機ELテレビを離陸させるためには、コストダウンが非常に重要になっているといえます。寿命や信頼性の課題解決はもちろんですが、コストの課題を克服するような革新的技術の登場に期待しつつ、今後の研究開発動向を注意深く見ていきたいと思います。