一度、思い通りにならなかったからといってあきらめない

――日本と中国の間に距離感が出てきてしまっていますが、影響は?

襟川氏:ゲームファンの目線で考えると、それほど影響がないように感じます。中国国内のビジネスパートナーとの関係も良好です。コーエーテクモは開発会社という立場で、中国の運営会社がゲームをサービスするという関係なのですが、われわれが作ったブラウザゲームは現地のものとは違って、オリジナリティがあると認めてくださっています。

 フィーチャーフォン向けゲームでは苦労していますが、「大航海時代Online」というPC用のMMORPGでは大成功を収めています。やってみないと分からないこともたくさんあるので、チャレンジを繰り返しながら中国市場に合った商品を作っていくことを続けていきます。

 近く発表する予定ですが、中国の運営会社と提携して新しいゲーム2作品をサービスインします。一度、思い通りにならなかったからといって、決してあきらめたりはしないです。次々とタイトルを投入していきます。とにかく中国は大きなマーケットですし、若いゲームファンの方もたくさんいらっしゃいますから。ビジネスチャンスは大きいと思っています。

 国と国との関係がギクシャクしていることは事実ですが、面白いゲームを楽しみたいというゲームファンの気持ちは世界共通ですので。そこにビジネスの道筋があると考えています。ただ、運営の仕方やビジネスモデルなどは、国との関係を十分配慮する必要がありますね。中国のビジネスは、中国の会社の方にやっていただくというスキームは基本的に続けていくつもりです。

――ローカライズの方法が大事とありましたが。

襟川氏:既存のタイトルをローカライズするわけですが、中国のサービス運営会社からいろいろなアイデアをいただいて、中国のゲームファンがより楽しめるサービスに改善させるわけです。日本の場合は、強力な敵を倒すために、仲間と一緒に戦ったり、自分が強くなれるようにアイテムを買ったりします。中国の場合は、割と仲間と競い合うという嗜好が強いようです。ですので、ステップを上り詰めて、トップになるという要素を取り入れたりしています。

――海外のモバイル系の売り上げが悪かった理由は?

海外戦略について、「まずは慎重に構えて、進むとなったら果敢に攻めたい」と襟川氏は話す

襟川氏:2012年度第1四半期から第2四半期にかけてチャレンジしてきたのですが、良い結果が出なかったということですね。米国市場の課題はまだ残っていて、これからも再チャレンジします。また、東南アジア、中国、台湾、韓国では成功と失敗を何度も経験してきています。この貴重な体験を基に、他の国々での成功へと広げていきたいです。

 フィリピン、マレーシア、インドネシア、タイ、シンガポール、それぞれマーケティングとセールス活動をしています。セールスといっても、スマートフォン向けゲームやPCブラウザゲーム、PCオンラインゲームなどが中心です。契約の成立したタイトルをローカライズして、現地のサービス運営会社を介して、サービスを開始するという流れです。現地のサービス運営会社とはすでに交渉をスタートしていますから、一つずつ結果が出てくるのではないかと期待しています。

――いつからサービスを開始する予定ですか?

襟川氏:各国で売り上げと利益がどのくらいになるのか、フィジビリティスタディをきっちりしなければなりません。当社のゲームをサービスしたいという、現地の会社はいくつかあります。しかし、実際に現地語化して、サーバーを用意して、人員をアサインして、それで収益になるのかというところは、非常に慎重に精査していますね。

 プロジェクトごとの予算管理をシステム化していますから、プロデューサーやディレクターは前月までの予算消化や売り上げに対する利益など、すべて見ることができます。何かアクションをするときに、事前のシミュレーションを何回も繰り返して、「いける」と思えるまで検証しています。まぁ、シミュレーションゲームが得意な会社ですから(笑)。

 ただし、企業の戦略として、収益は別にして、絶対やらなければならないというプロジェクトはあります。海外のプロジェクトについては、やってみないと分からないことが多いので、まずは慎重に構えて、進むとなったら果敢に攻めようと思います。米国の2タイトル、中国の2タイトルは良い経験として、次のプロジェクトに生かしたいですね。日本のソーシャルゲーム市場はいずれ飽和状態になり、その後、海外でソーシャルゲームがトレンドになるだろうと思っています。その先駆けになりたいですね。

――ビジネスモデルを修正すれば、中国マーケットは何とかなるものでしょうか。

襟川氏:そうですね。2012年にチャレンジしたビジネスモデルは難しかったな、と思います。私どもが取り組んだのが、フィーチャーフォンでしたので。けれどもこの1年でガラリと状況が変わりまして、スマートフォン向けで再チャレンジを、別のアプローチで検討しています。ネットワーク事業部の幹部は何度も中国に足を運び、ミーティングを重ねています。

「大航海時代 Online 2nd Age」
2005年からサービススタートした「大航海Online」シリーズの最新版。Windows版/PS3版、30日利用で1575円(税込)
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