空調設備の導入が測定のキッカケに

 横浜市は、2013年度から市内の小中高校でPM2.5の測定を始めることを決めた。学校薬剤師による学校環境衛生の定期検査の一環だ。

 PM2.5の測定を開始するキッカケの一つは、横浜市立のすべての小中高校が2013年夏までに空調設備を導入すること。2009年4月に施行された学校保険安全法の改正で、空調設備を導入した学校では浮遊粉じんの計測が環境衛生の検査項目に加わった。空調設備を入れると、教室内で粉じんを巻き上げる可能性のある空気の動きが生じるからだ。

 この法律のガイドラインで定められた検査は、PM2.5の測定を求めるものではない。対象は粒径10μm以下の浮遊粉じんである。今回、横浜市がPM2.5の検査に踏み切った背景には、社会的な関心の高まりがある。

 横浜市薬剤師会 学校薬剤師部会の山崎健氏は、「浮遊粉じんの測定値は、季節や校舎の階などで変わる可能性がある。PM2.5も自治体の測定局による数値だけでは分からないことが多く、現場で継続的に測定していくことが大切だ」と、PM2.5の測定を始める理由を話す。

自治体が環境測定で用いるPM2.5の自動測定装置。(写真提供:埼玉県環境科学国際センター)

 浮遊粉じんについてではないが、教室内のCO2(二酸化炭素)濃度が高まったら、これまでは「窓を開けて換気する」という指導が一般的だった。だが、2009年4月の法改正を受けて山崎氏らが実施してきた学校での環境測定の結果からは、必ずしもそうとは言えないことが分かってきたという。

 「例えば、NO2(二酸化窒素)の濃度は、教室内よりも外の方が高い傾向がある。もちろん、NO2の測定値自体は教室の中も外も国の基準値以下で問題はない。それにしても、窓を開けてより濃度が高い外気に換気することが本当に正しい対策なのかという議論がある」(同氏)。

 この状況が粒子状物質にも当てはまるかもしれないという。PM2.5を含む粒子状物質については、測定したデータがそれほど多くなく、まだ分からないことが多い。だからこそ、「教室内の濃度が高い場合、換気すれば、本当に大丈夫なのか」といった基本的なことを調べていく必要があるというわけだ。