今回紹介する書籍
題名:中国人的価値観
編者:宇文利
出版社:中国人民大学出版社
出版時期:2012年11月

 前回、中国人の伝統的な「天命観」(本書では古代の死生観を「天命観」と記している。これは古代中国人が「人の命は天賦のものだから」と考えていたことから来るものであろう。単に生命だけを指すのではなく、運命および命を指すものと考えられる)では「人の天命は天が定める。この世で何を得られるかは自分の願望などできめられるものではない」と考えている、と書いたが、本書では、彼らの天命観について面白い例を引いている。占い師というのは西洋にも存在するが、西洋の占い師は未来のことについて占うのに対し、中国の占い師は前世、今生、来世を一緒に占うのだという。それも彼らの運命観によるものなのだろうか。

 では、前回予告したように、現代の中国人の「天命観」についての記述を見てみよう。

 本書では、次のように述べている。

「現代は、経済は成長し、社会は進歩し、科学は発達している時代である。昔の「天命観」の面影は現代社会において完全に消えてはいないものの、科学的知識の欠如と技術の遅れからくる愚かさからは抜け出した。現代人は既に全面的な「天命観」に支配されてはいない。彼らにあるのは現代の『生命観』であり、人および生命というものに対し現代的な理解をしている。もちろん、伝統的な天命観と現代的な生命観の間に根本的な対立があるわけではなく、両者の間に差はあるものの、一定の関連は存在する」