かつてものづくり大国と言われた日本が、欧米や中韓に追い上げられています。各社が激しい競争にさらされる中で、既にトップ争いから脱落しつつある業界、企業も見受けられます。

劣勢に立たされる日本企業

 例えば、米Apple社のスマートフォン「iPhone」と音楽や動画などのコンテンツ配信サービス「iTunes Store」のような画期的な製品とビジネスモデルが日本の企業からは出てこないという話題は、本連載にご興味がある方であれば、嫌というほど耳にしていることでしょう。

 グローバル市場に目を向ければアジア勢が台頭しています。韓国勢はリバース・エンジニアリングを駆使して、日本製品の機能・品質を模倣しつつ、各市場のローカルニーズに合わせたカスタマイズを施すことで、これまでの何倍ものスピードで低価格・高品質な製品を市場に投入しています。スマートフォン市場において、iPhoneと韓国Samsung Electronics社のスマートフォン「GALAXY」がトップ争いを演じる中で、国内メーカーの製品はほとんど話題に挙がりません。日本ではあまり見かけませんが、韓国Hyundai Motor社の自動車は2000年代以降着実にグローバル市場でシェアを伸ばしています。

 また、欧州勢も負けてはいません。業界全体での標準化戦略や産官学の密な連携で技術開発を進め対抗しています。これを背景に、ドイツVolkswagen(VW)社などはモジュール化戦略を実行し、世界中で速く、効率的に現地ニーズに適した性能の車を造れる体制を構築しています。

 翻って日本企業を見ると強い日本の象徴とも言える自動車産業ですら、競合からの猛追にあっています。トヨタ自動車はアベノミクスの追い風を受け、2013年度3月期の業績は非常に良好な結果となりましたが、売上高、営業利益は先に述べた戦略で追い上げるVW社を下回っており、順風満帆とは言えません*1。家電業界に至ってはその不振ぶりが日々メディアで報じられており、 閉塞感すら漂っている状況です。

*1 2013年3月末の為替換算でVW社の売上高は約23兆3167億円、営業利益は1兆3915億円。トヨタ自動車の2013年3月期の売上高は22兆0641億円、営業利益は1兆3208億円となっており、VW社は売上高、営業利益ともにトヨタ自動車を上回っている。