米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
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新型タンカー需要を生む

 調査レポートは、より詳細に産業界への影響を分析している。シェール・ガスの採取と流通など直接に恩恵を受ける業界、発電事業や自動車、素材など間接的に影響のある業界についてだ。

 このうち採取においては、小口径シームレス鋼管の需要が増えるとする。この鋼管は、シェール層を水平方向に掘り進むために使う。日本からの輸出は米国にアンチダンピング措置によって停止状態であり、米国での投資を進めている。住友商事は米国の小口径シームレス鋼管メーカーに出資した。JFEスチールは米国子会社の電縫管メーカーの生産能力を3倍近くに増やす。兼松とJFEスチールは油井管加工メーカーを買収、同じく新日鉄住金も油井管加工メーカーを買収した。

 流通においては、LNG化のための液化プラントと運搬のためのタンカーの需要が増える。米国内、さらにカナダとメキシコへは、パイプライン網が整っているが、それ以外の国・地域にはLNG化してタンカーで運ぶことによる。液化プラントでは、IHIがシェール・ガスの液化需要が米国で増えることを見込んで、米国のエンジニアリング大手から液化部門を買収、合弁企業を2012年7月に設立した。2013年4月には、米国に2017年完成予定の液化プラントを受注した。大手の日揮や千代田化工などもさらなる受注拡大を目指している。関連部品メーカーとして、超低温ポンプの荏原製作所、再気化器の住友精密工業や神戸製鋼所がある。

 タンカー需要は、米国の輸出向けに加え、カタールやカナダのように販売先が陸続きではない国・地域に輸出する場合にも増えている。最近になって需要が高まっているのは、球形のタンクを搭載したものよりも容積効率の高い方形タンクを搭載したタンカーである。三菱重工、川崎重工、三井造船、ジャパン マリンユナイテッドが受注獲得を目指している。容積効率に加え、燃費の高さを強みに韓国メーカーと競合する狙いだ。