米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
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日本のLNG輸入価格は低下、米国を強く

 シェール・ガスの採取は、米国テキサス州から始まり、全米に広がっている。米国は天然ガスの輸入を大幅に減らし、天然ガス価格の下落要因となった。日本政策投資銀行の調査レポートの試算では、日本が米国からシェール・ガスを調達すると、2020年における日本のLNG調達価格は、現状の調達手法のまま2020年を迎えるよりも最大15.2%低下するという。

 さらに、産ガス国に大きな影響を与えている。カタールは米国向けを見込んで増産した天然ガス(LNG)の輸出先を欧州へ変更した。これによって欧州へ天然ガスを輸出していたロシアは値下げ要求を受けるようになって、中国や日本への輸出を拡大する計画だ。米国へのパイプラインを持つカナダは、米国への輸出を減らしてLNG化してアジアへ輸出する。

 米国エネルギー省は、2016年に米国がLNGの輸入国から輸出国になると見通す。天然ガスの貿易収支で2020年ごろに黒字化し、2040年の黒字額を約450億米ドルと予測している。一方、米国と並んでシェール・ガス埋蔵量が多い中国での商業生産開始は2010年代後半以降になるという。米国は、エネルギー戦略で中国やロシアに対して有利な材料をもったと言える。安価なエネルギー・コストによって幅広い製造業の競争力を向上させることに加え、安価な原料の提供で化学産業を活性化することにもなる。