米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
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天然ガス車の普及促す

 発電事業では、すでに米国でガス火力発電の比率が増えている。一方、環境問題などから新設されていない石炭火力の比率が下がった。原子力は、コスト競争力が薄れて米国での新設計画が相次いで中止になっている。米エネルギー省は、2010年に23.6%の比率だった天然ガス火力は、2020年に28.8%に増えるとの見通しを示している。一方、石炭火力は44.9%から40.2%に減る。石炭火力から天然ガス火力への移行によって、米国は2020年までに温室効果ガスの排出量を2005年比17%削減できるとする。

 調査レポートは、天然ガス火力発電が今後は高効率のコンバインドサイクル発電になった場合の設備投資額を計画中だけで170億米ドルはあるとし、2040年に1500億米ドルになると見込む。すでに日本企業では三菱重工が米国でのガスタービン工場を新設するなど生産能力を増強している。

 自動車業界への影響として、調査レポートは天然ガス自動車の普及を「シェール・ガス革命」が後押しする可能性を示唆している。天然ガス価格の低下と炭素繊維を使った小型軽量の燃料タンクの実現によって、大型トレーラではディーゼル車を天然ガス車が置き換えやすい状況になったという。米国のエネルギー省は、天然ガス車は、走行距離が16万kmとなる3年で、ディーゼル車との車両価格差(4万9000~8万6125米ドル)を回収できると試算している。

 現状では、トラックやピックアップトラックやさらに小型のディーゼル車では価格差を3年以内に回収できないが、天然ガス車が従来予想よりも速いペースで普及する可能性が出てきたといえる。国際エネルギー機関は、天然ガス車の保有台数は、現在の1500万台から、2035年に最大7000万台以上に増加すると予測している。今後の普及ペースを左右する燃料タンクには炭素繊維を使っていることから、この技術進化と需要拡大が相乗効果を生む可能性が高い。

米国での大型天然ガス車の普及シナリオ(資料:米国エネルギー省)
  2010年(実績) 2035年(リファレンス・ケース) 2035年(ポテンシャル・ケース)
販売台数
(大型車での比率)
860台(0.2%) 2万6000台(3.0%) 27万5000台(34.0%)
保有台数
(大型車での比率)
4万台弱(0.4%) 30万台(2.4%) 275万台(21.8%)