米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
米国の天然ガス生産量(資料:米国エネルギー省)
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 割安な天然ガス供給減となり得るシェール・ガスは、産業界にどのような影響を与えるのか。2013年2月に日本政策投資銀行が発表した調査レポート「シェール・ガス革命の見方(産業界への影響と日本への示唆)」から紹介する。インパクトは、日本のLNG(液化天然ガス)調達価格が下がるだけではない。世界の自動車、原子力発電、造船、素材など幅広い産業に影響を与えるという。

 シェール・ガスは、泥が堆積し固形化して出来たシェール層から採れる天然ガスを指す。シェール(shale)は日本語では「頁岩(けつがん)」といい、本の小口でページ(頁)が重なったような層状である。1億数千万年前といった古代に動植物の死骸が泥とともに積もり、発生したメタン・ガスが層間にたまった。ガスは、従来から採取されてきた天然ガス田とは異なり、層間のわずかな隙間に分散して滞留している。

 シェール・ガスが最近になって注目されているのは、安価な採取手法が主に米国各地で実用化されて、既存の天然ガスよりも低価格かつ大規模な天然ガス源となったことによる。これまで層間に分散したガスを低コストに採取する手法は実用になっていなかったが、2000年代に実現した。

 現在、実用化している手法は、既存の天然ガス田向けとは異なる。既存手法では、ガスだまり付近まで井戸を掘り、ガスを地上に噴出させる。これに対してシェール・ガスの採取では、まず井戸を垂直に数千m掘り進め、ガスを含むシェール層に達したところで徐々に水平方向に掘削方向を変え、シェール層に横穴をつくる。ここに高圧の水を送り込んでシェール層を砕く。破砕によってガスの通り道が大量に出来て、横穴を経由して縦穴にまでつながる。ガスの通り道は、水を抜いた後にも塞がらないように、砂状の物質を送り込んで経路を支持する。分散していたガスが、1本の井戸からまとめて取り出せて採算の合うコストで取り出せるようになった。