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エディターズ・ノート

ホンダ流ワイガヤを体験して見えたこと

  • 池松 由香=日経ものづくり
  • 2013/04/25 08:00
  • 1/1ページ

 あるカフェでのこと。会社の同僚4人でカウンターに座っていると、カウンター越しに茶色いロングヘアーのかわいらしい店員さん(メイドさん)がやってきました。「ご注文は?」の言葉もなく、ただそこにたたずんでいます。「え~っと、何かおすすめはありますか?」。沈黙に耐え切れずに切り出すと、今度は首をかしげるばかり…。「う~ん」。こちらも(なぜか)意地になって黙っていると、その店員さんはようやく小さな声でつぶやきました。「新人だから、分かんな~い」。

 実はこの店員さん、男性です。もっと正確に言うと、女装をした男性で、東京・秋葉原では「男の娘(おとこのこ)」と呼ばれています。その後、根掘り葉掘り聞いたところによると、「彼」の年齢は18歳で現役高校生。自慢のロングヘアーは地毛で、そのまま通学しても先生からおとがめはないのだとか。恋愛対象の性別は「?」とのこと。「髪型、かわいいね」と褒めると、「ありがと~」とはにかんでいました。2013年初め、あるイベントがきっかけで行った、秋葉原の「男の娘メイドカフェ」での出来事です。

 そのイベントというは、ホンダ流ワイガヤです。日経ものづくりで「ホンダ イノベーション魂!」を連載し、書籍『ホンダイノベーションの神髄』(日経BP社)にまとめていただいた小林三郎・中央大学客員教授の「ワイガヤはやってみなければ分からない」の一言がきっかけで、部内で実施することになりました。小林氏は、ホンダの技術者時代に数限りないほどワイガヤを経験しています。

懐の大きな街、秋葉原

 本物のワイガヤは3日3晩が基本のようですが、今回は週末を利用しての1泊2日となりました。内容は大きく3つに分かれます。(1)イノベーションにまつわる小林氏の講演、(2)チームでの現地調査、(3)同じチームでコンセプトを決める、の3つです。現地調査とは、例えば「秋葉原」や「巣鴨」といった特徴のある街の“変わった所”に行き、現場を見て、感じてくるというもの。そして、そこで感じ取った「空気感」や「価値」をコンセプトに落とし込むのが(3)になります。私のチームは現地調査の対象に秋葉原を選び、男の娘のいるメイドカフェと本物の女の子のいるメイドカフェをハシゴしました(写真を本ブログの最後に掲載しています)。

 私にとって秋葉原は、小さな頃に家族で家電を買いに行ったことがあるくらいで、なじみのない街です。イメージは「オタクの街」。秋葉原のディープな場所は、オタクの人たちの聖地だから、(特徴のない)自分が行っても浮いてしまうと勝手に思い込んでいたのです。ところが実際に行ってみると…半分正しくて半分間違っていました。

 オタクの人たちがいっぱいいることは間違いありません。でも、そんなオタクたちのホームグラウンドでありながら、私のような平凡な人も受け入れてくれる懐の大きさがディープな秋葉原にはありました。私も同僚たちも「いかにもビジネスマン」という出で立ちでしたが、それでも差別されることなく、楽しむことができたからです。メディアの報道など、間接的に見聞きしたことだけを信じていたなら、決して理解できなかった感覚だと思います。「現場に行くことの大切さ」を改めて痛感することになりました。

 何より同じ感覚をメンバー全員で共有できたことが大きかった。現地調査の後、共有してきたばかりのディープな秋葉原の空気感や価値をコンセプトに落とし込もうと、全員で脳がふやける(?)ほど考えつくしました。その日の夜遅くまで、そして、次の日の朝早くから。メンバーたちは、共に仕事をする仲間ではありますが、ここまで集中して同じ目標に向かって考えつくしたことはありませんでした。

私がバカになった瞬間

 この過程でもう一つ、貴重な体験をしました。考え続ける途中で、自分が「バカになる」のを感じたのです(笑)。コンセプトといっても、秋葉原を表現するキャッチフレーズのような言葉を考えるのですが、たくさんフレーズを出すうちに脳が限界を超え、どう頑張っても良い言葉が思い浮かばなくなりました。それでも何かをひねり出そうともがいていると、やがて、「もう他のメンバーにバカだと思われてもいい。思ったことは何でも口にしてしまえ!」と吹っ切れた。私がバカになった瞬間でした。

 ワイガヤの狙いは、まさにここにあるように思います。物事を考えて考えつくすと、人の脳は限界を超え、良い意味でのタガが外れます。体験したからこそ言えるのですが、バカをさらけ出し合うと、メンバーとの間に強固な連帯感と信頼感が生まれます。こうなればしめたもの。全員が一丸となって目標に向かってひた走れるようになります。

 私たちがどんなコンセプトに行きついたかは、ここでは秘密にさせてください(恥ずかしいので…)。ただ、この体験の後、私は「現場に行くこと」の楽しさに、はまることになりました。この話はまたいずれ。ワイガヤ、恐るべし。

男の娘メイドカフェで注文したメニュー。焼きそばの上にアイスクリームが! 私はおいしいと思いましたが、同僚の男性陣には不評。店員さんと話をしていたのも、ほぼ私だけ…。
男の娘メイドカフェで注文したメニュー。焼きそばの上にアイスクリームが! 私はおいしいと思いましたが、同僚の男性陣には不評。店員さんと話をしていたのも、ほぼ私だけ…。
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2店目の本物の女性のいるメイドカフェで。店員さんがドラえもん(左)とアンパンマン(右)の絵をケチャップとマヨネーズで描いてくれました。出来栄えはともかく(笑)、同僚の男性陣は絶賛。テンションもマックスに。ちなみに店員さんたちの写真撮影は、どのお店でもNGでした。
2店目の本物の女性のいるメイドカフェで。店員さんがドラえもん(左)とアンパンマン(右)の絵をケチャップとマヨネーズで描いてくれました。出来栄えはともかく(笑)、同僚の男性陣は絶賛。テンションもマックスに。ちなみに店員さんたちの写真撮影は、どのお店でもNGでした。
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