さらに、ハーネスを構成するケーブルとハーネスを束ねるバンド、ハーネスを固定するクランプなども含めて、ハーネスを部品として詳細設計可能な、ハーネス設計専用の3Dツールもある()。例えば、「エンタープライズハーネス」「ハーネスデザイナー」〔ランドマークテクノロジー(本社東京)〕、「VPS/Harness」〔デジタルプロセス(本社神奈川県厚木市)〕、「Advanced Routing/HarnessDesign」〔エンブレム(本社神奈川県大和市)〕などだ。

図●ハーネス設計の担当部署とツール
図●ハーネス設計の担当部署とツール
ハーネス設計の担当部門は企業によって異なり、メカ設計、エレ設計、生産技術のどこかが担当している。それに対応するような形で、ツールにもビューワから発展したもの、デジタル・モックアップ・ツールのモジュールであるもの、CADに追加するものなどがあり、運用形態が異なる。
[画像のクリックで拡大表示]

大規模ハーネスを扱い可能に

 ランドマークテクノロジーのハーネスデザイナーは、もともと3D-CADのモデルを表示するビューワから発展した、詳細なケーブルとハーネスの形状を作成するツールだ。しかし、ケーブル数が増えると処理時間がかかるようになり、1000本に及ぶような大規模な製品を扱う上では限界があった。そこで、ハーネスを経路と太さのみで表現してデータ量と処理時間を削減し、大量のハーネスを扱えるようにしたのがエンタープライズハーネスである

* ケーブル700本から成るハーネスの場合、ハーネスデザイナーに比べて処理時間は約1/5、データ容量は1/30程度になった。

 ユーザーは、半数以上がエレ設計者だという。回路設計の結果、ケーブルで結ぶべきコネクタ端子のペアが分かるため、これを「from-toリスト」として回路設計ツールから書き出す。このリストと、メカ設計の3Dモデルをエンタープライズハーネスに読み込み、所定の接続関係を満たすハーネスの3D形状を決めることができる。「元が操作の単純なビューワであるため、3D-CADに慣れていないエレ設計者にとっても敷居が低い」(ランドマークテクノロジー)という。

 エンタープライズハーネスを製品化した2008年当時、ハーネスを構成するケーブルの情報も扱っているにもかかわらず、ユーザーからは「お絵かきツール」と言われたという。そこで最近の機能強化では、ハーネスを被覆するチューブ(被覆)、ハーネスを束ねるバンド、ハーネスを固定するクランプといったハーネスの構成要素の情報を3Dデータに定義し、ハーネスの詳細設計を可能にした。さらに、ハーネスのたるみを表現可能にして、ドアなどの可動部にかみ込まれないかなどを検証できる。ただし、生産指示用の展開図などの図面作成は、次の課題になるという。