iOS/Android用パズルRPG「パズル&ドラゴンズ」が大ヒットし、平成24年度の通期業績(1月1日~12月31日)では、前年同期比、営業利益690.1%増の92億9800万円、経常利益505.5%増の93億3500万円と飛ぶ鳥を落とす勢いのガンホー・オンライン・エンターテイメント。
 3月25日には、ソフトバンクモバイルがガンホー・オンライン・エンターテイメントの普通株式を公開買い付け(TOB)により取得すると発表。ソフトバンクの連結対象となったが経営陣含め、これまでと何も変わらないということだ。
 このヒット作はどのような発想と企業文化の下で生まれたのか、ビジネスモデルをいかに広げていくのか、そして次の一手を森下一喜代表取締役CEOに聞いた。(取材:伊藤哲郎=日経エンタテインメント!、写真:加藤 康)*取材は3月6日に実施しました

2012年は2月にリリースした「パズル&ドラゴンズ」がAppStoreやGoogle Playでほぼ通年で第1位を獲得し、業績も右肩上がりの1年でした。

「『パズル&ドラゴンズ』を楽しまれている方はもちろん、10年間ずっとPCで『ラグナロクオンライン』をプレーしてくれている、根強いファンの方々はとても大切な存在。幅広いファンの期待に応えたい」(森下氏)

森下一喜氏(以下、森下氏):この1年で急に何か新しいことを始めたわけではありません。そもそも私が会社を作ったのは自分で面白いゲームを作りたかったから。その思いを形にするため、3年前に開発部門を自分の直轄へ組織改革してから、全タイトルの開発に企画段階から参加しています。

 いくら煮詰めても面白くならないゲームはリリースを見送るという決断をしたこともありました。

 この3年間、自分たちが100%面白いと思ったタイトルだけをリリースし、一本いっぽん大切にしてきた。その結果と、正直運だと思っていますが、昨年「パズル&ドラゴンズ」がヒットしたと考えています。

「パズル&ドラゴンズ」は、スマホアプリならではのまめなバージョンアップで、登場モンスターが続々と追加になるなど、プレーヤーを飽きさせない努力がヒットに結びついたと言われています。

森下氏:それもありますが、同じく私が重要だと考えているのはユーザーさんの生の声です。App StoreやGoogle Playなどの評価は何のバイアスもかかっていない、貴重な意見。「もっとこうだったら面白かったのに」というコメントを読むと、「うーん、悔しい。では、その期待をさらに上回るように改良しよう」と思い、実行に移す。その繰り返しです。

家庭用ゲームメーカーは、なかなかそうした「運用」に対応できる体制が組めずに苦戦しています。

森下氏:我々は10年間、「ラグナロクオンライン」などのPCオンラインゲームを手がけているので、ユーザーさんの要望をとり入れながら継続的に開発していくことに慣れています。その経験が「パズル&ドラゴンズ」でも生きています。

ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長室の壁には、森下氏が掲げる標語が並ぶ
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