少年時代から博士/科学者を目指していた山海嘉之氏。ウシガエルの筋肉収縮特性を調べたり、レーザに使われるルビーを酸化アルミニウムから生成しようとしたり…。旺盛な知的好奇心の延長線上に「ロボットスーツHAL」はある。そんな山海氏の発想の原点にある「人や社会に対する思いやり」に日経ものづくりが迫ったインタビューの第2回。(聞き手は日経ものづくり 中山 力)

さんかい・よしゆき 1958年岡山県生まれ。1987年筑波大学大学院工学研究科博士課程を修了し、同大学の講師、助教授、米国ベイラー医科大学客員教授を経て筑波大学大学院教授に。1991年よりHALの基礎研究を開始し、1998年に HALの1号機を開発した。2004年6月には、大学発ベンチャー企業としてHALなどのサイバニクス技術の研究開発、製造、販売を行うサイバーダインを設立した。(写真:栗原 克己)

 直感的で、人にとってストレスを感じない技術は今後、さらに重要度を増すでしょう。メニューが何層もの階層構造になっていて、何度もボタンを押さなくてはいけないようでは、使う気持ちもなえてしまいます。ロボットが専門家ではなく一般の人に使われるようになるには、このような点もクリアする必要があるでしょう。

 HALが生体電気信号を使って動作することも、感性による操作の1つといえます。脚や腕を動かす際に、直接ボタンを押したり直接的に「動け」と指示したりするわけではありません。HALが装着者の運動意志に応じて、装着者の動きをサポートするように自動的に動くんですから。

みんなの喜びを考える

 僕は、子どもの頃から、「あれってどういうふうにしてやってるんだろう?」「これってどうなっているんだろう?」と、いろいろと原理を考えるのが好きなんです。何かはっきり分かってないものに対して、きっとこうやればできるんじゃないかと、いつも遊び感覚で発想していく。

 例えば、僕が幼い頃によく見ていたロボットアニメの1つに「鉄人28号」があるのですが、「あれだけの自由度を持ったロボットを、レバー2つでどうやって動かすのかな」と疑問に思ってました。

 何度も映像を見ているうちに、はっと気付くわけです。どんなアクションに対しても、正太郎少年が例えば「パンチだ、鉄人!」と叫んでいる。その瞬間に「ああ、なるほど! あの2本のスティックが実はマイクで、音声認識でコントロールしているんだ」と勝手に想像しました。