デジタルメモ「ポメラ」や、インターバルレコーダー「レコロ」といったヒット商品を立て続けに開発した事務用品メーカーのキングジム。ユニークな商品で新市場を切り拓く同社の開発部隊で陣頭指揮を執る人物が亀田登信氏だ。1985年の入社以来、一貫して開発畑を歩き続けた同氏が、ヒット商品を生み出す開発現場の舞台裏を日経ものづくりに語った。そのインタビューを2回にわたって紹介する。(聞き手は日経ものづくり編集長 荻原 博之)
おかげさまで、2008年11月に発売したデジタルメモ「ポメラ」が大ヒットしました。キャッチフレーズは「いつでもどこでもすぐ『メモる』」。電源を入れるとたった2秒で起動しますから、会議中でも移動中でも、はたまた外出先でも大事なことや思い付いたことをすぐにメモできます。
そんなポメラを、私は開発部門の責任者という立場で世の中に送り出しました。最近、つくづく思うんです。ポメラが「(キングジムにおける)1つの解」ではないか、と。
市場は狭くても100%の満足を
キングジムはファイルの会社というイメージが強いと思いますが、意外にも、創業者の宮本英太郎はいわゆる町の発明家だったんです。そのためか、宮本は「人の物マネをするな」と、すごくオリジナリティーを大切にしました。実は、この創業者のDNAが「キングファイル」に始まり、ラベルライターの「テプラ」やポメラなど、当社の多くの製品に脈々と受け継がれています。
ポメラでいえば、「あり得ない」というくらい機能を絞り込んだ点。だって、これだけネットやメールが浸透している時代に、ポメラではそれらを一切排除しました。できるのは文字入力だけ。ですから、さすがに役員会議を通すのは大変でした。