先だって米Intel社が発表した2013年第1四半期(1~3月期)決算は、パソコン市場の落ち込みを如実に反映しました(Tech-On!関連記事1)。全社売上高は126億米ドルで前年同期比2.5%減、純利益は20億4000万米ドルで同25.3%の減少です。事業部門別に見ると、パソコン向けマイクロプロセサを扱う「PCクライアント事業本部」の売上高が前年同期比6%減となり、サーバー向けプロセサを扱う「データセンター事業本部」の増収(同7.5%増)でそれを補えなかった形です。

 調査会社の米IDCによれば、2013年1~3月のパソコンの世界出荷台数は前年同期比13.9%減の7630万台となりました(Tech-On!関連記事2)。13.9%という前年比減少率は、IDCが四半期ごとのパソコン出荷台数の調査を開始した1994年以降で最大。前年同期比での出荷台数の減少は実に4四半期連続です。

 パソコンからスマートフォンやタブレット端末への市場シフトが、業績を直撃しているIntel社。同社は目下、成長著しいサーバー向けプロセサ事業の強化や、モバイル端末向けプロセサ事業での巻き返しに力を注いでいます(Tech-On!関連記事3)。そしてもう一つ、将来的に大きな事業に育てることを視野に入れているとみられるのが、半導体の受託生産(ファウンドリー)事業です。

 Intel社は過去にも、ベンチャー企業との受託生産契約を交わした経緯がありますが、ここにきて初の大口案件を受注しました。FPGA大手の米Altera社が製品化を計画している14nm世代のFPGA製品群です(Tech-On!関連記事4同5同6)。

 Altera社がIntel社を選んだ大きな理由は、立体トランジスタ(FinFET)の量産実績です。Intel社は2011年末から量産中の22nm世代のマイクロプロセサにFinFETを導入しており、現時点でFinFETを量産している唯一の半導体メーカーです。Altera社の長年の生産委託先である台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co., Ltd.)をはじめとするファウンドリー各社も、2013~2014年に量産を始める16/14nm世代でFinFETを量産化する計画です。しかし、量産がうまく立ち上がるかどうかは未知数。Altera社はIntel社の「確実性」を評価したというわけです。一方、Intel社から見れば、ファウンドリー事業は巨額の設備投資を回収するための有力な手段の一つといえます。

 今後、半導体製造技術の難度がますます高まっていく中で、Intel社は業界随一のプロセス技術を強みに、ファウンドリー業界で存在感を高めていくことになるでしょう。韓国Samsung Electronics社が最近数年間で、米Apple社向けビジネスを原動力に大手ファウンドリーに育ったように、Intel社も近い将来、大手ファウンドリーとして認識されるようになる可能性は十分にあります。ただし、Intel社がファウンドリー事業に懸ける「本気度」は、モバイル端末向けなどの自社ブランド事業の今後の成否に左右されるでしょう。

 Intel社が参入し、面白みを増してきたファウンドリー業界。その最新動向を日経エレクトロニクス2013年5月13日号の解説記事で紹介する予定です。ご一読いただけましたら幸いです。