キッカケは「夏休みに何かつくろう」

 Gunosyの創業者たちは、前述した通り、東京大学の大学院で学び、この春に修了したばかり。その一人で代表取締役 社長の福島良典氏は、「大学で学んだ自然言語処理や機械学習、データ・マイニングの技術を生かしたサービスを開発したかった」と、開発のキッカケを振り返る。

 「大学院1年生の夏休みは暇だったんですよ。それで、何か作ろうと考えている時に思いついた。今のインターネットでは、かなりの時間を使って面倒な手間をかけないと、自分が興味を持つ情報を追えない。これを何とかできないかと」

GunosyのiPhone向けアプリの画面例。
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 例えば、「RSSリーダー」というWebサービスがある。あらかじめ登録したWebサイトの更新情報(RSSフィード)を自動的に取得するサービスだ。

 このサービスでは、登録するWebサイトの数が増えると、手元に届く更新情報が膨大になっていく。仮に分類したとしても、結局、忙しい日常ではすべてに目を通せない。便利と思って更新情報を取得しているはずなのに、逆にどんどんたまっていくことが憂鬱になってしまう。

 テレビや新聞といった大手メディアは、興味を追求するという点では情報の当たりはずれがある。メディアが選別したネタが視聴者や読者の見識を広げる場合もあるが、それ以上に的外れの内容であることが少なくない。

思いがけない出合い、「狙い通りです」

 福島氏らがコンテンツ推薦サービスの開発に着手した背景には、こうした多くのインターネット利用者が感じているであろう、分かりやすい体験がある。

 「毎日さっと読みこなせる量で、かつ利用者の興味に合っている。さらに、その先にある、今まで読んだことのないような記事もリストアップして利用者に伝える。そうしたサービスをつくろうと決めました。その結果、完成したのがGunosyです」(同氏)。

 Gunosyでは、サービス利用者の興味を把握する情報の獲得先として、「Facebook」や「Twitter」などのソーシャル・メディアを活用する。利用者がソーシャル・メディアのアカウントでどんなことに興味を持ち、どんな振る舞いをしているか。詳細は明らかにしていないが、これらの情報を自然言語処理や機械学習、データ・マイニング技術を駆使して分析する。

 この情報と、過去にGunosyを利用した際に利用者が選んだ記事の履歴などを組み合わせて利用者の興味を把握。インターネット上の記事の内容を解析し、重み付けしたデータベースと、利用者の興味に関する情報と照らし合わせた結果から記事を選び、毎日25本のヘッドラインを送る仕組みだ。

 興味深いのは、Gunosyから配信されてくる記事に思いがけない出合いがあることである。実は、筆者もサービスを利用しているが、「よくぞこんな記事を、こんなマイナーなWebサイトから探し出してくれた」と思うことがたびたびある。こう水を向けると、福島氏は「それは狙い通りです」と、我が意を得たりの表情で話し始めた。