「Gunosy(グノシー)」というサービスをご存じだろうか。インターネット上のニュース・サイトやブログの記事を拾い出し、その中から利用者の興味に合わせた記事を選んで推薦(レコメンド)するWebサービスである。このサービスが最近、大きな注目を集め始めている。

Gunosyの登録会員数の推移。2013年1月にiPhone向けアプリを投入後、伸びが加速し始めた。会員数のデータは、GunosyがFacebookページで公開しているものを用いた。
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 サービスを運営する企業は、サービス名と同じGunosy。2012年11月に東京大学の大学院生たちが立ち上げたベンチャー企業である。サービスの開始は、会社設立より前の2011年10月。創業者たちは、大学院1年生の時にα版のサービスを開発した。

 その後、順調に登録会員数を伸ばし、2013年1月に「iPhone」向けのアプリケーション・ソフトウエア(以下、アプリ)を無料公開すると会員数の伸びが加速。Android端末への対応を経て、同4月には会員数が15万人を超えた。スマートフォン利用者の急速な拡大を背景に、2013年中に100万人の会員獲得を目指す。

利用者の嗜好に合致する高い精度

 同様のニュース推薦サービスは少なくない。その中で、Gunosyが注目を集める理由は、推薦する記事が利用者の興味に合致する精度の高さだ。利用者の興味に刺さる記事、「おや?」と思わず読んでしまう記事のヘッドラインが毎日届く。普段決して見ないWebサイトに載っている面白い記事に気づかされる。そうした感想を述べる利用者が少なくない。

 これは、サービス利用者の行動にも表れている。毎日届く推薦記事の掲載先に記事を読みに行く比率(アクティブ利用者率)は、1日に50%ほど。1週間では約70%に上る(2013年3月時点)。スマートフォンでアプリはダウンロードしても、使うのは最初だけで死蔵しているサービスは多い。そうした中、登録ユーザーの約半分が毎日サービスを利用しているというのは、かなり多い方だろう。推薦した記事が、利用者の興味と合致する確率の高さを物語っている。

 コンテンツの推薦機能は、スマートフォンやタブレット端末はもとより、スマートテレビやHDDレコーダー、カーナビといった、いわゆる「スマート家電」で重要な役割を果たす。しかし、重要性は理解していても、大手家電メーカーでは軽視されがちだ。

 もちろん、研究開発は粛々と進んでおり、機器への搭載例もある。それでも、推薦する内容がお節介に過ぎてしまったり、最大公約数的な当たり障りのないものが多かった。今、Webサービスの業界で登場しているコンテンツ推薦サービスは、Gunosyに代表されるように推薦の精度という観点で様相が変わりつつある。利用者の興味に則したコンテンツを薦めることはもちろん、思ってもみない驚きを利用者に与えるという点で一歩先を行く。

 では、それを可能にしている発想はどこから生まれたのか。