ITの活用によってより突っ込んだ設計検討や新たな開発が可能になる中で、そのデータをより綿密に検証したいというニーズも強まってきている。それに応えるツールの1つが3次元プリンタだ。設計段階で3次元データが存在していることが多くなった昨今、その存在感が増している。

 ものづくりは最終的に物理的なものを造る。そのため、どうしてもコンピュータ上では再現できない現象は残ってしまい、確認のための実験などが不可欠になる。そこで重宝されるのが、試作品などの実物(以下、立体モデル)を短時間かつ低いコストで手に入れられる3次元プリンタだ()。今では、治具や金型、少量生産の部品を作製する手段としての活用も広がっている1)。今回は、主な3次元プリンタの概要を解説する。

表●主な3次元プリンタ
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断面形状を積層

 3次元プリンタは、「3次元積層造形」とも呼ばれるように、断面形状の集合体として立体モデルを表現する。つまり、板状の断面形状を1層ずつ造形していくことで立体モデルとして完成させるのだ(図1)。その造形方法はさまざまで、使用できる材料や造形後の処理が異なる。

 3次元プリンタという名称が使われるきっかけとなったのが、インクジェット・ノズルを使う方法。一般的なプリンタと同じノズルを用いて断面形状を造形する。ノズルから立体モデルの材料(光硬化性樹脂やワックス)を直接吐出する方法と、粉末材料を固めるためのバインダ(接着剤)を吐出する方法がある。

 前者を採用するのは、イスラエルObjet社やキーエンス、米Solidscape社の装置、米3D Systems 社の「ProJet」シリーズなどだ〔図1(a)〕。Objet社やキーエンスの装置は、立体モデルとサポート部(後述)の両方に光硬化性樹脂を使い、吐出した樹脂を硬化させるための紫外線(UV)ランプがインクジェットノズルと同時に造形面を走査する*1

 一方、後者のバインダは、米3DSystems社の「ZPrinter」が採用する〔図1(b)〕まず。粉末状の材料を敷き詰め、その表面の断面形状部分にバインダを吐出して固める。1層分の造形が完了すると、次の層の粉末を供給し、同じプロセスを繰り返す。

 こうしたインクジェット・ノズルを使わない方法としては、米Stratasys社の熱溶融積層法(FDM)がある〔図1(c)〕。熱可塑性樹脂を可動ノズルから絞り出す方法だ。細長いワイヤ状の材料をノズル内部で溶かして断面形状部分に絞り出す*2

*1 Solidscape社の装置は両者にワックスを使う。ProJetでは立体モデルの材料には光硬化性樹脂もしくはワックス、サポート材にはワックスを使う。

*2 Solido社の装置は、接着剤を塗布したシート状の材料を断面形状に切断し、積み重ねていく方法。

図1●主な3次元プリンタの仕組み
断面形状の薄板を積み重ねていくことで立体モデルを作製する。インクジェット・ノズルを使う方法では、モデル材料とサポート材料を直接吐出する方法(a)と、粉末材料に対してモデル部分にだけバインダを吐出する方法(b)がある。モデル材料などを直接吐出する方法では、光硬化性樹脂やワックスを使う。粉末材料を使う方法では、未硬化の粉末がサポートの役割を果たす。インクジェット・ノズルを使わない方法では、ヒータを内蔵した可動ノズルから熱可塑性樹脂を吐出する方法(c)などがある。
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