日経エレクトロニクス

工業製品の「産地」を作る、山形の挑戦

田中 直樹=日経エレクトロニクス
2013/04/10 05:00
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 神戸ビーフ、下関のふぐ、青森のりんご――。農産物や海産物には、誰もが思い浮かべる名産地がよくあります。こうした「産地」を工業分野で作ろうとしている地域があります。有機ELの産地として名乗りを上げている山形県です。

 山形県は、山形大学の研究シーズに着目し、過去10年余りにわたって有機EL照明の研究開発と事業化に取り組んできました。2003年11月には有機エレクトロニクス研究所を設立。その後、県内に有機EL照明パネルの専業会社「ルミオテック」が設立され、そのパネルを生かして新しい照明器具を世界へ発信しようとする企業の取り組みも活発化しています。

 有機エレクトロニクス研究所は2010年3月に解散しましたが、その成果を県内企業に還元していくことを目的として、産学官連携有機エレクトロニクス事業化推進センターが2010年7月に設立されました。2013年3月5~8日に東京ビッグサイトで開催された第11回国際照明総合展「ライティング・フェア 2013」では、同センターを運営する山形県産業技術振興機構がブースを構え、山形県内の企業や研究機関が作製した有機EL照明器具の製品や試作品を展示しました。

 「山形は、単にものづくりが集積した地域を産地とは呼びません」。同機構のブースには、こう書かれた説明パネルが張り出されていました。「つくる(産業)、つかう(生活)、まなぶ(社会)」の三つの機能が同じ地域に共存し、影響しあい、助け合ってこそ、産業と生活が豊かになる。これが、山形の考える新しい産地の姿であり、「有機EL産地・山形」のコンセプトだといいます。

 有機ELを「つくる」ための研究機関やパネル・メーカーがあること。有機ELを率先して「つかう」人たちがいること。有機ELの特徴を「まなぶ」ことができる、学校や美術館などがあること。そして、これら三つをつなげる仕掛けがあること。これが新しい産地のあり方だと、三つの機能のつなぎ役を自認する山形県産業技術振興機構は考えています。

山形県上山市にある温泉旅館「名月荘」が和風客室に採用した有機EL照明
[画像のクリックで拡大表示]
山形県米沢市にある料亭「吉亭」が和室に採用した有機EL照明
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 「有機ELといえば山形」と名付けた同機構のブースでは、このような考えのもとで事業化を進めている新しい有機EL照明器具の展示が目白押しでした(Tech-On!関連記事)。例えば、県内企業のタカハタ電子と材木工芸および研究機関の山形県工業技術センターが共同開発し、米沢市の料亭「吉亭」の和室で実際に使われている照明器具や、県内企業の多田木工製作所とオーガニックライティングおよび上述の山形県工業技術センターが共同開発し、上山市の温泉旅館「名月荘」で使われている照明器具などです。いずれも、県内企業のルミオテックが生産した有機ELパネルを使用しています。

 ライティング・フェアの期間中には、「つくる」ための研究開発を後押しするような追い風も吹きました。文部科学省は3月7日、「地域資源等を活用した産学連携による国際科学イノベーション拠点整備事業」として15件を発表し、山形大学が7社と共同提案した「フロンティア有機システムイノベーションセンター」が採択されました。

 山形の挑戦に、今後も注目していきたいと思います。

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