クーラー、冷蔵庫と続く家電三種の神器の大トリはテレビ。21世紀になってテレビの定義が変わりつつあるが、五感の中の視覚、聴覚に働きかける媒体とここでは定義しよう。残りは、味覚、触覚、嗅覚。これらは難しい。その意味で、しばらくテレビは人と機械のコミュニケーションには不可欠である。

 まずは、視覚を取り上げよう。それも静止画の話をしよう。画家の世界である。物を描写し、人に伝える人が画家である。3次元は彫刻家、画家は2次元の世界の専門家である。元来、3次元の物を2次元に描写する苦労を画家が重ねてきた。古くは、ダビンチの遠近法、レンブラントの影の使い方。2次元という制約の中、実物に近付けることが腕の見せ所であった。

 その腕を打ち砕いたのが、カメラの発明である。フェルメールもカメラの原型である暗箱を使ったと言われている。最初は便利な小道具であったが、技術進歩は画家のビジネス・モデルを破壊した。もちろん、ダビンチやレンブラント、フェルメールなどの巨匠はどんな時代でも生き抜ける才能と腕がある。このような一流ではない画家さん達が食いぶちを失った。人物紹介、商品紹介、家族の記念、身分証明。下手な画家よりカメラである。画家が失業し、カメラ屋が繁盛する。もっとも、今はカメラ屋受難の時代である。証明写真で食いつなぐか、L版1枚30円の自動印刷機で糊口をしのぐか。技術が時代を変えている。