・ 前回より続く

議会、反トラスト規制当局、司法省、裁判所はApple社寄り

 これまで当事者の主張を見てきた。ここからは、他の関係者がFRAND問題をどのように考えているか検討していこう。

 Apple社が主張する「FRAND義務が存在すれば、ライセンシーが連邦裁判所によって定められたFRANDロイヤルティの支払いを拒んでいる場合や連邦裁判所がライセンシーに対する裁判管轄権が無い場合の例外を除いて、差し止めや排除命令を請求できない。救済措置は損害賠償に限られる」という考え方は、米FTC、米司法省、連邦裁判所、米議会、欧州EC、欧州裁判所などで広く支持されている。

■FTCは、最近出された2012年11月26日付けのRobert Bosch社調査(ファイル番号121-0081)および2013年1月3日付けのGoogle社調査(ファイル番号121-0120)の同意審決において、「必須特許で差し止め救済措置を請求する行為は、それ自体で不公正な競争方法および不公正または欺瞞的な行為または慣行を規制するFTC法第5条に違反する」と結論付けている。また、 FTCは、2012年12月4日付けで、CAFCにおけるApple社対Motorola社事件(事件番号2012-1548, 2012-1549)において、「特許権者がFRAND条件でライセンス供与を約束していることは、それ自体で、特許権者への対価として妥当なロイヤルティが適切であることを示すに十分である」あるいは「他のeBay factors (すなわち「両社の不利益のバランス」および「公益」) も必須特許が係る訴訟では「ホールドアップ」により技術革新、競争、消費者に害が与えられる懸念があることから、差し止め救済措置には不利に作用すると期待される」との意見書を提出している。(注:eBay factorsとは、2006年、米eBay社対米MercExchange社事件において最高裁判所が判示した差し止め認定基準をいう。この基準については、本連載「Apple対Android訴訟に見る米国特許政策、“独占権の重視”へ向かうか」を参照)。さらに、FTCは、2012年6月6日付けで、別のITC調査(337-TA-745、Motorola Mobility社対Apple社)においても同様の趣旨の意見書を提出している。 

■司法省反トラスト局は、2013年1月8日付けで米特許商標庁と共同で、必須特許に基づく差し止め請求行為に関するPolicy Statement(政策声明)をITCに提出している。その中で、「ITCは、特許保有者がFRAND条件で特許ライセンスすると自発的に約束していることにより、差し止めや排除措置ではなく損害賠償が特許侵害の救済に適したものであると認識しているか否かを考慮すべきである」と勧告している。さらに、司法省は、現在、Samsung社の必須特許の乱用の可能性について調査中である。