図◎ハイブリッド・ドア。新構造のヘミングを使った箇所の断面を見せた。
図◎ハイブリッド・ドア。新構造のヘミングを使った箇所の断面を見せた。
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 今、「異材接合」技術の開発が加速しています。その名の通り、異なる材料の部品をくっつける技術です。ねじやリベットといった締結要素を使わずに、樹脂と金属、異種金属同士の複数の部品を一体化できます。もちろん、品質管理が難しい溶接を使う方法とは異なる新しい技術です。

 ねじやリベットといった締結要素は大切な部品ですが、無いに越したことはありません。部品点数が減るのですから、その部品代も管理代も作業代も削減できます。軽量化も図れます。さらに言えば、設計の自由度が上がり、デザイン性を高めることも可能です。異材接合技術の開発が活発な背景には、「従来に無い革新的な設計をせよ」と無理難題(?)を押し付けられている設計者の切実な声があるのです。

 そうした中、ホンダが最近、立て続けに異材接合技術を発表しました。1つは、新型「アコード」のフロント・サブフレームで実用化した、鋼とアルミニウム合金の接合技術です。摩擦撹拌接合(FSW)向けの工具を使い、両金属の接合面に活性の高い新生面を造ることで金属接合させます。本誌2012年10月号FOCUS「ホンダ、鋼とAl合金の接合技術を開発」に掲載しました(10月号関連URL)。
 
 そして、もう1つが、「Acura」シリーズの新型「RLX」に採用されたハイブリッド・ドアで実用化した技術です。内側の板(インナパネル)に鋼を、外側の板(アウタパネル)にアルミ合金を採用。こちらは接着剤も使うのですが、それだけではありません。新しい構造のヘム折り(ヘミング)を考案して両パネルを強固に結合させるのです。外観品質や強度を確保し、世界で初めてハイブリッド・ドアの量産化に結び付けました。

 ハイブリッド・ドアの実用化で同社が狙ったのは、軽量化です。クルマ1台当たり、すなわち、4枚で比較すると、両パネルとも鋼製の「オール鋼製」ドアよりも11kgも軽くできます。一方で、両パネルがアルミ合金である「オールアルミ合金製」ドアよりも、コストを大幅に抑えることができます。

 ハイブリッド・ドアのコンセプト自体は従来からあり、競合他社でも水面下で開発を進めてきたといいます。しかし、鋼とアルミ合金の線膨張係数の大きな差という分厚い壁が開発者の前に立ちふさがり、なかなか解決策が見つかりませんでした。試行錯誤の末に斬新な策を発想し、この分厚い壁を唯一突破したのが、ホンダというわけです。

 粘り強く取材し、この新技術の詳細を本誌4月号の特集2「ホンダ、鋼とアルミのハイブリッド・ドアを実用化」に掲載しました(4月号関連URL)。他誌では読めない金型の動きやヘミングの加工方法まで突っ込んで解説したつもりです。この記事から、読者の方がご自身の難問の壁を突破する勇気やモチベーションを得てくだされば幸いです。