一方、Arima Communications社は2012年、スマートフォンへの移行という壁にぶち当たった。Arima Communications社の携帯電話出荷台数は、世界金融危機の影響を受けた2009年こそ、前年の1300万台から1160万台に減少したが、その後、2010年は1631万台、2011年には2046万台と順調に伸ばした。ただ、出荷の大半は従来型携帯電話(フィーチャーフォン)が占めていたため、台頭してきたスマートフォンへの移行とフィーチャーフォンの成長鈍化に苦しんだ2012年は約1000万台へと半減。売上高も前年比21.2%減にまで落ち込んだほか、スマホの出荷台数も300万台前後にとどまった。

 Arima Communications社の主要顧客は、フィーチャーフォンの時代から、ソニー(Sony Ericsson社時代含む)、米Motorola Mobility社、韓国LG Electronics(LGE)社の3社。ただMotorola Mobility社とLGE社も、スマホへの移行では苦戦を強いられたようだ。

 例えば、Motorola Mobility社については、2012年4月末の台湾市場で、Arima Communications社がMotorola Mobility社のスマホ3~4機種の受注に成功したとの観測が流れた。ところが、2011年にMotorola Mobility社を傘下に収めた米Google社が2012年8月13日、Motorola Mobility社の従業員の2割に相当する4000人の削減と、世界94拠点のうちの1/3を閉鎖すると公表。台湾の経済紙『工商時報』(2012年8月15日付)は、Arima Communications社とFoxconn International(FIH)社(富士康国際)が2012年下半期に出荷する予定だったMotorola Mobility社のスマホ、合わせて10機種が、全てキャンセルになったと報じた。

* Foxconn International(FIH)社(富士康国際) EMS世界最大手、台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕傘下の香港上場子会社。

 同紙によると、Motorola Mobility社は2010年、ミドルレンジとローエンドのフィーチャーフォンについて、設計と製造をArima Communications社に委託。これが中南米市場で成功を収めたことを受け、ローエンドスマホの生産もArima Communications社に託そうとした。ところがフィーチャーフォンの不振とスマホ市場での出遅れが響いてリストラとスマホ戦略の見直しを余儀なくされた。