「今、多くの製造業で必要とされているのは、立ち止まって根本に戻ること」。テーマサイト「設計・生産とIT」のアクセスランキングで、今回、第1位に入った記事「第1回:数学は日本が勝つための最後のフロンティア」の中の一節です。この記事は、渋滞学で有名な東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏のインタビューを起こしたものですが、同氏の鋭い視点や洞察力が光っています。

 日本の製造業は、新興国の企業の激しい追い上げもあり、かつての強さを失いかけています。その背後にある最大の要因は、「長期ビジョンの欠如にあるのではないか」と西成氏は問いかけています。「評価の期間が短く、すぐに結果を出したがる。半年、下手をすると3カ月トライしてみて、結果が出なかったら次の方策を考える。残念ながら、これでは良いものは作れません」。多くの企業と共同研究を一緒に手掛けている西成氏だからこそ、その言葉は大きな説得力を持って響いてくるのではないでしょうか。

 「なぜ不良品が出るのかを考えてもいいし、なぜ想定する基本能力が出せないかを考えるのでもいい。このときに、根本から原因を炙り出して、その原因を解決する。そして、根本からの問題を解決する際に、いい道具が数学なんです」。今の日本の製造業は対症療法に頼りすぎ。必要なのは根っこから原因を取り除く原因療法ではないか。そのためには、数学が武器になる。西成氏の言葉をかみしめていくと、日本製造業の復活に向け、ものづくりはどうあるべきか、技術者としてのスタンスをもう一度考えさせられるかもしれません。ちなみに、同氏のインタビュー記事は3回シリーズで、その他の2本も3位と5位にランクインしています。

アクセス記事ランキング(3/8~4/4)
設計・生産とIT
1 第1回:数学は日本が勝つための最後のフロンティア
2 ホンダが独自の渋滞抑制技術の効果を確認---インドネシアで実施した公道実験で
3 最終回:“数学で証明しました”に勝るものはない
4 第3回:大部屋が持つ3つの機能---「組織の壁を破壊」「課題を早期解決」「意思決定を迅速化」
5 第2回:モデルを近似化すれば数学がはまる
6 【Part2】第1回 なぜ上司はイノベーションに反対するのか
7 イオンの効果に生じた疑問、技術者を直撃
8 第3回:統一ネットワークはなぜできなかったのか
9 【Part2】第2回 “執行派”がイノベーションを潰す
10 第7回:効率向上で空いた時間をムダ遣い(上)
11 iPhone 5の外形図面を見てみた
12 東横線と東京メトロを結ぶトンネルは変わった形
13 【Part2】第3回 決断しない役員
14 幾何公差の基本を理解する 
15 イオンは殺菌に効くか? メーカーに疑問をぶつけた
16 第8回:効率向上で空いた時間をムダ遣い(下)
17 インドからやってきたエリートエンジニア達
18 パナソニックが今後の成長戦略を発表、自動車向け事業と住宅向け事業の売上高をいずれも2018年に2兆円規模へ
19 第5回:「ベオウルフ(Beowulf)」とPCクラスタシステム、そしてPGI CDK
20 加工シミュレーション・ツール