「今、多くの製造業で必要とされているのは、立ち止まって根本に戻ること」。テーマサイト「設計・生産とIT」のアクセスランキングで、今回、第1位に入った記事「第1回:数学は日本が勝つための最後のフロンティア」の中の一節です。この記事は、渋滞学で有名な東京大学先端科学技術研究センター教授の西成活裕氏のインタビューを起こしたものですが、同氏の鋭い視点や洞察力が光っています。
日本の製造業は、新興国の企業の激しい追い上げもあり、かつての強さを失いかけています。その背後にある最大の要因は、「長期ビジョンの欠如にあるのではないか」と西成氏は問いかけています。「評価の期間が短く、すぐに結果を出したがる。半年、下手をすると3カ月トライしてみて、結果が出なかったら次の方策を考える。残念ながら、これでは良いものは作れません」。多くの企業と共同研究を一緒に手掛けている西成氏だからこそ、その言葉は大きな説得力を持って響いてくるのではないでしょうか。
「なぜ不良品が出るのかを考えてもいいし、なぜ想定する基本能力が出せないかを考えるのでもいい。このときに、根本から原因を炙り出して、その原因を解決する。そして、根本からの問題を解決する際に、いい道具が数学なんです」。今の日本の製造業は対症療法に頼りすぎ。必要なのは根っこから原因を取り除く原因療法ではないか。そのためには、数学が武器になる。西成氏の言葉をかみしめていくと、日本製造業の復活に向け、ものづくりはどうあるべきか、技術者としてのスタンスをもう一度考えさせられるかもしれません。ちなみに、同氏のインタビュー記事は3回シリーズで、その他の2本も3位と5位にランクインしています。