「ホンダが量産品への適合が可能な、摩擦攪拌接合による鋼とアルミニウム合金の接合技術を開発」(ニュースリリース)。「東北大と日立など、鋼やチタンなど融点の高い金属を接合できるコバルト合金製の摩擦攪拌接合ツールを実用化」。これまで、量産レベルでは、アルミ合金や銅合金、マグネシウム合金のような低融点の金属に限られていた摩擦攪拌接合(FSW:Friction Stir Welding)の適用先が鋼などより高融点な金属へと広がり始めている*1

*1 大気圧での融点は、アルミニウムが660℃、銅が1083℃、マグネシウムが651℃。これらに対して、鉄は1539℃、チタンは1727℃と高い。

摩擦熱によって金属がアメ状に軟化

 摩擦攪拌接合とは、円柱の先端に突起を設けたツールを使い、突き合わせた2枚の板(母材)や重ね合わせた2枚の板の接合したい部分の上から、同突起を回転させながら押し付けることで、2枚の板を接合する技術だ(図1)。

図1●摩擦撹拌接合の概念
突き合わせによる接合で塑性流動を利用したものが左。重ね合わせによる接合で金属結合を利用したものが右(冒頭で紹介したホンダの鋼とアルミ合金の接合技術の場合)。
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 回転する突起と板の間に生じる摩擦熱によって突起周辺で板(金属)が局所的にアメのように軟化し、それにより回転する突起が板の中に入り込む。その結果、突起周辺でアメのように軟化した金属が混ぜ合わされ(塑性流動が発生し)2枚の板が一体化する、あるいは2枚の板の接合面で新たに金属結合が作られてそれらが一体化するといったものだ。