日経ものづくりの人気コラム「ホンダ イノベーション魂!」や著書「ホンダイノベーションの神髄」で知られる小林三郎氏(元・ホンダ経営企画部長)。同氏が、2013年3月22日開催の「JTNフォーラム 2013 Spring ―― 日本の製造業復活の芽はここにある」の基調講演で語った熱い想いを綴る連載の2回目(最終回)。イノベーションを起こすために、40歳以上の社員が果たすべき役割を示す。

中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授 小林三郎氏

 ソニー、キヤノン、ホンダ。ベンチャーから大きくなった企業には共通項がある。創業間もないころにユニークなリーダーがいて、“ロクでもない社員”がいて、年寄りがいない、というものだ。実際、3社には著名な創業者がいる。30数年前の小さなベンチャー企業には、有名国立大学を出た“ロクな奴”は来ないだろう。ホンダに私が入社したころ(1970年代初め)の同社の平均年齢は30歳を切っていた。中学校を卒業して入社した若手が多かったからだ。

 これは(元気な企業の)十分条件ではないが、必要条件の大切な部分を示唆している。有名国立大学を卒業した社員は、入試で良い成績を出せるので、記憶力や主観的な論理判断力に優れる、といえる。しかし、イノベーションに必要なのは、1時間後にでもよいので質の高い答えだ。求められる能力が違う。しかも、多感な学生時代に勉強ばかりして、人間の奥底の欲求を分かるような経験に乏しい人もいるのではないか。年寄は、一般にはリスクを取らない。