日経ものづくりの人気コラム「ホンダ イノベーション魂!」や著書「ホンダイノベーションの神髄」で知られる小林三郎氏(元・ホンダ経営企画部長)が、2013年3月22日開催の「JTNフォーラム 2013 Spring ―― 日本の製造業復活の芽はここにある」の基調講演に登壇、熱い想いを語った。べらんめぇ口調で聴講者を何度も爆笑させた講演を編集してお届けする。同氏のメッセージは、日本の製造業や社会を再び元気にするため各企業でイノベーションを起こそうというものだ。

中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授 小林三郎氏

 日本はダメだね。1990年のバブル崩壊以降、日本の製造業は新しい製品を市場に送り出してこなかった。やったことといえばコストダウンと効率化。そんな新しいことをしなかった人間が、一部を除き日本企業のトップになっている。その間、米国ではApple社が「iPod」を市場に出して復活した。「ウォークマン」で世界のライフスタイルを変えたソニーがiPodを製品化できなかったのは最悪だ。2050年には日本のGDP(国内総生産)が世界第8位に転落するとの予測がある。(日本を復活させるのに、メディアなどで取り上げられている)観光業では不十分だろう。食料や資源を輸入するのだから、外貨を稼ぐ必要がある。そのために製造業は、革新的な製品・サービスを生み出すイノベーションが必要で、コストダウンだけではダメなんだ。

 ではイノベーションとは何か。特徴ではなく、特異性だ。説明のため過去にイノベーションを起こした商品を二つ挙げよう。